ネット配信〜真実は小説より面白い

桜庭みゆき

第1話 何も書けなくなって

 小説サイトで書いていたわたしは、急に何も書けなくなってしまった。


 いや、何も書きたくない状態になってしまった。


 何もしたくない。

 何もやる気が起こらない。


 ゲームも飽きた。


 わたしはこれから何をすればいいのだろう。


 そう思っていた時に、半年前にやめた、仮想ライブ空間のネット配信のことを思い出した。


 ちょっと遊んでみようかな。推しメンはもういないけど、何もしないよりはマシかもしれない。


 そんな気持ちでまた始めてみた。


 半年前までやっていたので、初心者ではない。だけど推しメンがいない。


 知らないタレントさんの配信を観ても面白くはないことはわかっていた。


 ネット配信にログインすると、わたしはリスナーとなり、アバターとなって配信者のルームに入れるのだ。


 貰えるのは初期アバター。かなりダサいアバターだ。


 有料のアバターもあるけれど、そんなものにお金を使いたくはない。


 知っていた。配信者が作ったアバターがあることは。アバターを持っている配信者のルームに入り、星と呼ばれるアイテムをひとつだけ投げると、その配信者のアバターをゲットできるのだ。


 ルームに入る前にプロフィールをチェックして、アバターを持つルームに入室して星をひとつ投げた。


 何部屋か星を投げてゲットできたアバターを、自分のアバターを保存している場所で見てみる。


 ほとんどが配信者が描いたイラストなので、ヘンテコなのも多い。


 その中で、声優さんのルームからゲットしたアバターが気に入り、それに決めた。


 もう一度、貰った声優さんのルームに入る。


「さっちゃんさん。あれ、さっきも来てなかった?うちのアバター使ってくれてありがとう」


 入室しただけなのに、名前を呼ばれた。そう、ネット配信でのわたしの名前は、さっちゃんにしているのだ。


 慌ててコメントする。


「こちらこそありがとうございます」


「さっちゃんさん。また来てね」


 半年前は入室して名前を呼ばれることはなかった。コメントしないのに名前を呼ばれるとドキッとして嬉しい。


 貰ったアバターに着替えて入室してみて、気づくと同じアバターの人がたくさんいた。当たり前だ。声優さんはファンがたくさんいる。ファンの方がそのアバターを使っているのだから。


 アバターを貰い、声も掛けてもらえたので、その声優さんのルームをフォローした。


 フォローすると、配信が始まるとスマホに通知が来るシステムだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る