第五刀 剣術・戦術・演習授業
五時間目が終わり、眠いので居眠りをしようと机に伏したところに冬空がやって来て急に俺の頭を叩いた。
「痛って!?」
「次剣術の授業だから早く行かないと間に合わないよ。ってか私たちは着替えるから出て」
「ああ、分かった」
そういい、冬空は去っていった。
動きやすい服装で来いと、言われたので少し大きめのジーンズに黒の半袖Tシャツを着てきた。廊下にある刀専用のロッカーから二本の刀を取り出しホルダーに差した。
「えっと、第一演習場は、と…」
生徒手帳に書いてある校内の地図をみながら第一演習場に向かった。
*****
チャイムが鳴り、授業担当の先生が演習場に入ってきた。
「気をつけ、礼」
「「よろしくお願いします」」
礼をして先生の話を聞く。
「前半は基礎堅めだ。アップに校庭2週して、素振り20回、能力発動を1回してきて。あと、菊田は話があるから後できて」
そういい、先生は演習場の端の倉庫に入っていった。
ちなみに第一演習場は体育館のようになっている。
俺は倉庫まで走っていく。
「なんですか?話って?」
「お前の刀のスキルを教えて欲しい。もちろん、二本ともな」
「あぁ、なるほど。わかりました」
「待ってろ今パソコン持ってくるから」
先生はパソコンを倉庫の奥から持ってきた。
「よし、じゃあ頼む」
「はい。まずは
「どっちだ?」
「黒いほうです。で、スキルは百花繚乱・零です。内容は刀を百本まで増殖出来るスキルです。まあ、まだ扱いきれてないですけどね」
最近分かったことがある。今の自分では刀を十本までしか増やせないこと
先生はカタカタとパソコンに情報を打ち込んでいた。
「で?二本目は?」
「白いのが夢幻です。スキル名が変幻自在ですね。で、名前の通り他のスキルを下位
互換で発動することができます」
「ふむふむ、OK分かった。申し遅れたが私は演習担当の今井だ。で、今日は基本的に対人戦をやるからな、お前は校長先生から気を付けろと言われてる。くれぐれも問題は起こすなよ」
「……はい」
多分、深雪先輩との事だろうな……
「ということで、3週走ってきて、その後右で素振りを25回左も同じね。じゃあ、行ってこい」
多分、男子だから回数とか多いんだろうな。
「はい」
俺が話している間に女子達は走り終わったらしく、素振りを始めていた。
「少しペースを上げるか」
走り終え、素振りを左右25回やる。途中、他の女子が能力発動の為演習場の中心に向かう中、平野だけが残って素振りをしていた。
「平野も二刀流なのか、大変だな」
「私は小太刀だから大丈夫だよ。それよりも腰がちゃんと支えきれてないよ」
確かに端から見ればへっぴり腰で適当に振ってるようにしか見えないだろう。
「こ、これでもちゃんと振ってる方だぞ」
「ふ~ん。よし40。終わったから私は行くね」
そういい平野は演習場の中心に向かった。
平野が向かった中心を見ると激しく火花が散ったり、刀が巨大化したりなどと、派手なスキルばかりだった。
「25と。よし終わった」
一旦息を付き神経を落ち着かせて能力をイメージする。
「百花繚乱・零!」
上空に出せるだけの刀を出現させる。それぞれ一本ずつ自分の周りを囲むように地面を突き刺していく。
「よし、これで
中心を振り向くと全員がこっちを見ていた。
「もうちょっと安全に出来ないですかね?見てるこっちがヒヤヒヤします」
「え?ちゃんと人のいないところにやったぞ?」
「そういうことではなくて……はぁもういいです」
「そう、じゃあ適当に深雪先輩のを使おうかな?」
「ふぅ、百花繚乱!」
夢幻と黒鉄・零をひたすら見えない敵に向かって切りつける。約10連撃のところで終わった、というよりかはその場で体勢を崩してしまった。
「へえ、こんなもんなんだ。ってうお!?」
スキルの反動か立ちくらみがして、上手く立ち上がれなかった。
「あれ?なんで立ちくらみが?」
「身に会わないスキルの使い方をするからだな」
上を見上げると、今井先生がいた。
「今のは生徒会長のものだろ?辛うじて、10連撃くらいは打てていたが能力に体が追い付いてなかったぞ。ああ見えて福田は努力しているから耐えられる訳で、新人のひよっこの頃は彼女も制御に困っていたぞ。まあ、それを使いたいならまずは毎日素振りをして足腰を鍛えることだな」
「はい」
……深雪先輩努力家な事ばれてますよ
「じゃあ、整列して」
先生の号令で整列する。ちなみに俺は一番端っこだ。
「今日は模擬実践をする、寸止めで決着を着ける方法だ。コートが4つあるから、一組で最大20分だ。それじゃあ適当に始めて」
「一緒に組も」
「冬空とか?」
「イヤ?」
冬空がこっちをなぜか上目遣いで見つめてくる。
「分かったから上目遣いを止めなさい」
「よしっ!」
「じゃあ、あそこで良いだろう」
「ってか、今日こそはゲーム見せてよね」
「分かったよ。用事もないし」
「うん」
そう話しているとコートを他のペアに取られてしまった。
「あ」
「とられちゃったね」
「まあ、待てば良いだろう」
他のグループを見ると凛子と平野のペアで戦闘を行っていた。
「「よろしくお願いします」」
「じゃあ、行くよ」
「いくら、学級委員長だとはいえ、容赦はしませんよ。流星!」
凛子の動きは残像がギリギリ見えるレベルまで早くなり平野の横に周り横凪ぎを払った。
平野は小太刀二本で受け止めてバックステップで後退した。
「おおっ!殺す気できてるねぇ」
「それくらいしないと倒せませんからね」
「じゃあ次はこっちのターンだね」
そう言うと、平野は二本の小太刀を構える。
「闇夜」
囁くように平野がスキルを言うと、辺りが暗くなった。
「夜に、なったのか?」
「うん、そうだね」
「もう、なんでもありだな……」
「続けて
平野がもう一本のスキルを発動すると、水に入っていくように地面に埋まっていった(?)
「……埋まってるんだが」
「違うよ、あれは影に潜ってるんだよ」
「へ、へえ……」
「潜られたら最後。何処から出てくるかは分からない」
「恐ろしすぎるだろ」
「でも、範囲攻撃系や影を消す能力には弱い」
なら、凛子は平野に対しての相性は最悪だ。
当てずっぽうで受け止めなければならないのだから。
「くっ、やはり平野さんのスキルは厄介です、ねっ」
凛子は力任せにふった刀は空を斬る。
「あれじゃあ体力だけを消費するだけだ」
「あれしか方法が無いんだから無理だよ」
凛子の疲労が溜まり、動きが遅くなったところで、凛子の背後から平野が出てきて手を後ろから回し混むようにして凛子の首に刃を突きつけた。
「はい、おしまい!」
「にっこりしながら言わないで下さい。降参です。だから刃を離して下さい」
そう言い、鞘に刀を納める。
「よし、まずは一勝!」
「とっとと挨拶しましょうよ。待ってる人もいるんですから」
「もう、堅苦しいなぁ鶴見さんは」
「「ありがとうございました」」
「はい、交代」
丁度10分くらいが経った。
「じゃあ、行くか」
「うん」
俺達はコートに入り定位置についた。
「なんか、このコートってさポ○モンにのバトルフィールドに似てね?」
「ほんと、それ。思ってた」
お互いゲーム脳なんだなと実感しつつ挨拶をする。
「「よろしくお願いします」」
「じゃあ、3秒数えるからそれで始めよう」
「わかった」
「じゃあ、いくぞ。3.2.1.スタート!」
「氷結」
地中から5mほどの氷のトゲがズカズカと出てきて、俺を突き刺そうとした。
俺は辛うじて、横に緊急回避が出来た。
「ねえ!寸止めする気ゼロでしょ!?」
「回復出来るじゃん」
「それにしてもさぁ…フィールドが全部凍っちゃったんだけど…」
冬空が放った氷を中心に地面には氷が張っていた。
「これ、スケート出来るじゃん」
「うん、かき氷とか作れるから便利」
「いやいや、普通今のシーズンにかき氷なんて食わないからね!?」
「別にいいでしょ、氷結!」
さすがに今度は回避出来ない。
だから、盾をだす!!
「百花繚乱・零!!|防壁〈シールド〉!」
俺は急いでシールドを張る。
「盾とかずるい」
冬空がぷくっと頬を膨らました。
「じゃあ、正々堂々真剣勝負といこうじゃないか。百花繚乱・零!」
10本ほどだが出せる限界の本数の刀を操作し、俺と冬空を囲むように凍った地面に突き刺す。
そして、自分が持っている
俺は
「なんのつもり?」
「スキル使用禁止のバトルをしよう。純粋に剣術だけのバトルだ」
「もし、私がそれを破ったら?」
「そのときは仕方ないさ。でも、俺はスキルは使わない。この刀に誓うよ」
「……どこかのラノベの主人公なのかな?イタい。やめて。こっちまで恥ずかしくなる」
「すまん、今のはさすがに自分でも痛かったと思う。とりあえず俺はスキルは使わない」
「ふ~ん。まあ、いいや。じゃあ、行くよ」
「ああ」
冬空が上から打ってくるので横から流す。
そして、間合いに入り込み下から切り上げるが避けられる。
「やっぱり、太刀筋は読みやすいね」
「深雪先輩と一緒のこと言ってる……」
そう会話している間にも冬空はかなりのスピードで打ち込んでくる。
「えい!」
突き!?
突きの回避方法や流しかたは教わってない為、俺は対応が出来なかった。
顔の横にある刀を見て、自分がもう負けている事に気付く。
「ま、参った」
「じゃあ、私の勝ちってことで」
冬空が鞘に刀を納めると、周りの氷が一斉に蒸発した。
「ああ、死ぬかと思った」
「集合」
今井先生の合図で整列をする。
「え~と、はいお疲れ様。どこか怪我した人はいませんか?」
「……」
「はい、じゃあいないということで。まあ、見てて思ったのが皆スキルの使い方が雑なんだよな。特に菊田と冬空のペア。最後の囲んだのはどういうことだ?あと、冬空。あくまで対人戦だから手加減はしとけ。とりあえず、皆自分のスキルの使い方をもうちょっと研究してきな。9月に剣舞大会もあるからね。どこも強豪ばっかりだからすぐに負けるぞ。それじゃあ号令」
「気をつけ、礼」
「「ありがとうごさいました」」
*****
俺が寮に帰り、パソコンを起動しているとインターホンが鳴った。
扉を開けると冬空がスマホを持って立っていた。
「じゃあ、やろ?ゲーム」
「あ、スマホ版なのね」
「いつでも出来るし」
「授業中とか?」
昨日英語の授業中にやってたの見たぞ。
「う、うるさい!!とにかく入るから」
そう言い、冬空は部屋に入ってきた。
「いらっしゃい。冬空さん」
「鶴見さんもいたんだ。てっきり部活で居ないのかと」
「部活は月曜日と木曜日ですからね。あ、お茶でも出しますね」
「え、いいよいいよ。自分でやるから」
二人がお茶を淹れるとかなんとか言ってる間に俺はログインしておく、ログインすると新しいイベントの告知が来ていた。
「えっと、なになに?~迫りくる暴風~風竜を捕獲せよ。ふ~ん、最近竜系が多いな。まあ、別に暗黒龍持ってるからいいんだけど。」
ちなみに俺が持ってる暗黒龍はそのまま龍で風竜はドラゴンのような見た目だ。
「おーい冬空、好きなの選んでくれ。ってかフレコ教えて」
「あ、うん。1246ki7nop6ct1dだよ」
「よし、申請送ったよ」
「承認した。あと、このスキン欲しい」
「忍者コスでいいのか?」
「うん、それでいい」
忍者コスを選びギフトとして冬空に送る。ついでに手裏剣型の髪留めを送りつける。(キャラが男だからつかわないし。イベントで貰ったやつだしあげるか)
ついでにパーティー申請をしておく。
「届いたよ。ってあれ?なんで髪留めも入ってるの?あ、パーティー申請は承認と」
「キャラが男だし短髪だから付けないんだよ。ってかジョブは暗殺者なんだな」
「だから、忍者コスが欲しいって言ったの。って本当にレベル500!?暗黒の大賢者って本当に人間だったんだ」
「そんな二つ名が付いてたのか。ってかおいコラ、人間だったんだとかいうな。俺はちゃんとした人間だ。ということでまあ、とりあえずこれからよろしくな(ゲームの中で)」
「うん、よろしく(ゲームの中で)」
凛子は茶を持ってきた後ずっと会話を聞いてたらしい。
「ふ、二人が何を言ってるのか理解が追い付かないのですけど……」
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