第60話 決まらない(原理)

「 決まらない(原理) 」


ドアをノックするとあなたはいなかった

もういちど気をとりなおしてドアをノックす

 るとあなたは机にすわっていた

あのときあなたは部屋にいなかったではない

 かとあなたに問うとわたしはなにも間違っ

 たことはしていないとあなたはこたえる

わたしはドアを閉め

言い忘れたことがあったことに気がついて

再びドアをノックすると

あなたいなかった

わずかなあいだにあなたはどこに行ってしま

 ったのか

そういえばあのときあなたと話したのは一瞬

 だったような気もするし気のせいだったか

 もしれない

ここでいつまでも待っていてもあなたには会

 えない気がしたのでわたしはドアを閉めた

わたしに会いたければドアを開けるタイミン

 グを限りなく少なくするそうすれば会える

 確率が上がるはずだとあなたは言っていた

 ような気がする

どのようにすればあなたに会えるのかますま

 すわからなくなった

しかしドアを開けないことにはあなたに会え

 ないことは真実らしかった

わたしはいまにもドアに手をかけようとして

 いる

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