第2話「突然出来ていた洞窟(風がひゅーとぬけてました)」

 ここは都内にあるマンション、小説家志望の俺はいつものように机に向かい、小説の話を考えていた。ウェブ小説で投稿している連載途中の作品を今、更新したところだった。


 俺は「ふー」と息を吐き、椅子に座りながら背伸びをする。すると飼い猫である三毛猫のミーが周辺に散らばっている本やペットボトルをヒョイと避けながら、ひょろ長い何かをくわえながら、押し入れに入っていった。

「ん?さてはミーの奴、また押し入れでいたずらをしようとしてるな」

 この前のことだ、押し入れに入ってったミーは、押し入れの中から帰ってきたと思えば口にネズミをくわえながら満足そうにこの部屋に戻っていくのが見えた。そう言えば、最近はゴキブリを口にくわえながら押し入れから出入りしていたこともあったな。

 押し入れには俺の衣服等が入ってある。ミーの遊び場では決してなく、ましてミーが玩具として出し入れしている物は決して一緒にしてはいけないものばかりだ。衛生的に。


「今度はなんだ、蛇の抜け殻でも押し入れにでも入れたのか?そんなことはさせない。ご主人様をこれ以上怒らすと怖いのだと思い知らせてやる」

 俺は椅子から立ち上がると、思いっきり押し入れを開けながら、

「こら、ミー、またいたずらして今度は何を入れ……。は?」

 ミーが入っていった押し入れには、俺の衣類等が入ってあるはずの中身が消えて、洞窟っぽい岩々しい感じになっていた。奥底が真っ黒で何も見えない闇そのもので、不安感が漂っている。


「は?ここってなんていう異世界?もしかして、俺って異世界にでも転生したの?」


 リアル異世界?なんでこんなところに出現してるの?俺はなんでこんな状況になっているのかを整理する。

「全然分からん。なんで三階の部屋の押し入れが洞窟になってるんだ」

 俺は頬っぺたをつまんだ。痛い。夢は見ていないらしい。俺は「うーん」と考えながら悩む。このままマンションの担当者に電話をかけるべきだろうか。普通ならそうだろう。そんないきなり洞窟みたいなものが出現されたらパニックに陥るだろう。

 俺は身体を横にクネクネとしながら、「うーん」考え込み、一つの結論を出した。

「よし、この中に入ってみよう。押し入れだしそんなに奥底はないだろう。それに行き詰っている小説のネタになれば一石二鳥ものだしな」

 そんな自分でも訳の分からないことを言いながら、スマホをポケットに入れて、防災用の懐中電灯を片手に奥に進んでいった。

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