第4部 「摩天楼の決戦編」
20話
『さあ、ついに間も無く始まります。皇楼祭二回戦!ここ、芭部流の塔二階層での戦いとなります! いやあ、私も緊張してきましたよ!解説の牟田さん、今の心境は!?』
『うん。一番緊張してるのは選手達本人じゃないかな。 』
『え?』
『だからつまり、僕たちが緊張してどうすんだって言ってんダヨォ!!いい加減にしろ!』
『失礼しました・・・』
『なーんてね!!あっははははははは』
『もー、驚かさないでくださいよー。』
相変わらずほのぼのとしてる実況&解説席である。 この席も一階層同様、天井に張り付いている小部屋の中にある。上からなら闘技場全体が見渡しやすいからである。
桐生は二回戦第一試合に備え二階層の控え室にて待機する。そしてトーナメント表を見る。
「えーと、次の相手は・・、『猿男』か。」
一方、桐生の控え室のとなりのとなり。桐生と戦う事になる『猿男』の控え室では。
「キーッキッキッキ、どうせオラなら楽ショーに決まってるっキ!この"二つの技"を併せ持つオラならば・・。」
ウゥーーーーーーーーン!!
そしてついに二回戦第二試合開始五分前のファンファーレが鳴り響く。
" 間も無くー、二回戦第一試合が始まります。 桐生選手と猿男選手は、ゲートの奥にて待機していてください。"
桐生はもうゲートまで来ていた。合図が来たら観客達の前に姿を現わす。
「相手がどんな奴でも負けられやしない。」
そして。
『みなさんお待たせしました!これより二回戦第一試合を開始したいと思います!まず、東ゲートからは、皇楼祭公式戦初デビューでありながら初戦を見事に勝ち抜いた桐生選手!!』
桐生はゲートを潜り闘技場の真ん中へと向かって歩く。
『そして、対する西ゲートからは、見た目は猿、頭脳は人間の猿男選手ーーッ!』
「キッキッキ・・。」
サラリーマンの格好をした猿顔の男が入場する。何やら背中には大きな籠を背負っているようだ。中には何が入っているのだろうか?
二人の選手が向かい合う。そしてお互い礼をする。 桐生の対戦相手の猿男は何やらニヤニヤと笑っている。
『両者とも、熱い戦いを見せてくれることを期待します。それでは二回戦第一試合・・、
はじめッッ!!』
ビーーーーーーーーッ!!
試合が開始される。桐生と猿男。両者はしばらく睨み合う。 猿男の方から喋り出す。
「ふん、相手はただの高校生っキか!楽勝ッキ!ちゃっちゃと終わらせちゃるッキー!」
「やれるならやってみろよ、猿頭。」
「ムッ!?今オラのことバカにしたろッキ!?
許さないッキーー!」
余計な一言で猿男の逆鱗に触れてしまった桐生。
「オラから行くっキ!! 喰らえ、
『パーシモンズ=マシンガン』!!」
猿男はスーツからマシンガンのようなデバイスを取り出すと、まだ熟していない"青い柿"を銃弾がわりに補充し始めた。
「まさかあんな硬い物をぶっ放すつもりか!?」
「そのまさかをやってのけちゃうのがこの猿男様だっキ、死ねぇえええ!!」
ズダダダダダダッと、マシンガンから青い柿の弾が乱射された。
『おっとお、最初に仕掛けたのは猿男選手!!彼のデバイス、"パーシモンズ=マシンガン"は熟す前の青い柿の実を相手にぶつけるというシンプル且つ危険なものです!桐生選手は逃げるだけで精一杯だー!!』
なぜ柿なのかと言うと、猿男は昔話の猿かに合戦に憧れて、しかも自分の顔が偶々猿っぽかったからである。 理由になるか?これ。
敵のマシンガン乱射に、闘技場を駆け回る桐生。
「くっそお、あんなの当たったら痛いにきまってるぜ、ブボォッ!!」
乱射された硬い柿の内、一個が桐生の顎に命中する。
『おっと、桐生選手被弾しましたねー!』
「きゃーきゃきゃきゃきゃ!ザマーミロ!今すぐ蜂の巣にしてやるっキー。」
「柿じゃあ蜂の巣にはならねーだろ。」
桐生はズキズキと痛む顎を手で押さえながら言う。
「あん?まだ喋る気力があるッキか!?お前、結構面白いっキー。」
再び柿マシンガンを撒き散らす。
「よく喋る奴だな!!お前からは小物臭がプンプンするぜ。後、そんなに無駄弾を撃ち続けてたらすぐに無くなるぜ?」
桐生は喋りながらも飛んでくる青い柿を避けて、避けて、避けまくる。 そのうちの一個は桐生の右足首にあたり、もう一個は首を大きく振って回避し、もう一個はバック転で避けた。
「うるせえッキ!!その生意気な口を今すぐに・・ん?」
カチッカチッ
「おいどうした、動け!」
どうやらマシンガンは弾切れだった。無駄玉を撃ちすぎたせいだろう。背中の巨大なカゴの中は空っぽになっていた。
「ほら言わんこっちゃない。」
「えーい、こんなモン使わなくたってガキ1人くらい潰せるっキ!喰らえ、オラの切り札!」
『猿男選手がマシンガンを放り捨てましたねえ。果たして次はどんな技を仕掛けるんでしょうか!?』
猿男は大きく口を開けて空気を吸うと、
直後。その喉からは 超音波を伴った驚嘆に値する奇声が放たれた。
「キャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!!!!!」
闘技場全体が地震みたいに揺れ始める。
桐生は慌てて耳を両手で塞ぐ。
「うるっっせえ!!なんて音だ!!」
その奇声に含まれる超音波は腹の奥底まで伝わってくる。当然、観客達もその超音波の餌食となった。
「ギャー、うるせえもーーーーッ!!耳が、鼓膜が破れるもーーー!!」
パニックの敷島に対し、サファイとマナトはあまりのうるささに失神してしまっていた。
だがこの攻撃のせいで試合は長くは続かなかった。
ピピーーーーーーッ!!
突然審判がホイッスルを鳴らした。何やら手には赤いカードを持って挙げている。
「猿男選手、会場のみんなの耳に悪いからレッドカード!!」
「へ?」
猿男の声が止まった。
『おーーーっっとお、今の奇声が周囲の人達に危険だと判断されたのか、レッドカードを出されてしまった!! 猿男選手は即退場です!』
『うるさいから早くでてけー。』
「ひ、ひどいっキ!何でっキ!?オラはただ必死に戦っただけで・・」
「ですが退場は退場です。さっさとでてけよクソザル。」
審判が指摘する。
「く、くっそ・・。こんなところで、こんな形でオラが負けるッキか!?」
猿男は悔しさのあまりそのサル顔をみるみる内に真っ赤に染め上げる。沸騰寸前だ。
「まずいぞ・・あんな奴が理性を失ったら・・」
桐生はゴクンと、唾を飲み込む。
(会場の皆んなが危ない!!)
「ウッッキィィイイイイ!!」
猿男は怒りの余り審判に飛びかかる。だが何故かその審判は動じない。
「無理矢理にでも試合を続行させるッキー!」
その時、
パパパパパパパーン!!
「ウッキィ!!??」
どこからか銃声が聞こえた。 その弾が猿男の頭に命中する。 麻酔銃だ。
猿男は倒れ、気を失っている。
銃を撃ったのは、作業服を着た会場のスタッフ達だった。彼らは急いで猿男の体を足で抑えて無理矢理縄で縛りつける。
「えっほ、えっほ、えっほ。」
スタッフの一人が猿男の体を肩に担ぎ上げてそのまま闘技場を後にしていった。他のスタッフもその後に続いて去っていった。
闘技場はしばらくシーンという静寂に飲み込まれた。
そして。
『えー、只今審判から渡った情報によりますと、猿男選手の今の奇声は反則と判断されたようです。よって猿男選手は失格、桐生選手の勝利になります!!』
ワァアアアアアアァアア
観客の中にも異論を唱えるものはいなかった。当然である。もしあの猿が勝ち上がってしまったら、またあの奇声を聞かなければならなくなるからだ。(まあ、その場合は試合を見るまえに帰っちゃえばいい話なんだが)
「まあ、勝ったからいい・・のか?」
こうして二回戦第一試合は桐生の勝利で幕を下ろした。
皇楼祭 二回戦 対戦成績
第一試合 《勝》桐生 《負》 猿男 (反則)
第二試合 《勝》石ころ 《負》 ジョンレモン
第三試合 《勝》虎次郎 《負》クズ
第四試合 《勝》黒崎龍弥 《負》 もんたみの
To be continued..
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