第8話 今後の作戦

 田村零士と武井良太のペア。藤島奈美と解放者アリス(森太菜)のペア。そして、長井敏和と小林圭のペア。

 田村に言われるまま、そのペア同志が横に並ぶように移動した。


「さて、まずチームの組分け、そして各チームのやるべきことは話しました。まず、ここまでに関しての質問はないということでいいですか?」


 田村が全員の反応を確認してきた後、ニコリと笑う。

「では、続いて具体的な作戦内容と今後の行動について説明をしていきます」


 田村はペアの武井から少し離れ再び中央に立つ。

「まずは手始めに、再び解放者の演説を敏和くんに行ってもらいます。その時は武井くんと藤島さんはもちろん……、合わせて……圭くん、君にも参加してもらいます」


 ……やはり、こういう話になるのか。

「どういう形で……ですか?」


「ただ、敏和くんの後ろに黙って立っているだけでかまいません。藤島さんや武井さんと同じように立っていればそれで充分です。


 真の王からしてみたら、本物の解放者はもちろん、今や脱退したわたしの息がかかっている敏和くんに対してもかなりの警戒心と打倒目標を掲げていることでしょうからね。二人がそろっているだけで、十分真の王の目を引けるでしょう」


「ちなみに、その演説はどういう内容でいくつもり?」

 質問をさらに乗せてきたのは長井。


「はぐれ者集めを始めるという宣言を行ってもらおうと思っています。分かりやすく言えば仲間集めですね。今回からは、はっきりと仲間を集うように宣言していこうと思います。


 そして、それと同時に藤島さんもその場で紹介してください。仲間集めを中心となってやってくれる人物であると。

 まずは藤島さんの信頼をしっかり得ることが重要です。


 ついでに、敏和くんは隣にいる圭くんと一緒に打倒キングダムの行動を続けていく意思をしっかり見せて頂けるとよりよいかと」


「今回の演説は前までと違って、しっかりと信頼を得られるような形でないといけないわけか……」


「そうですね。できますか?」

「まぁ、考えてみるよ」


 ……演説の内容は田村ではなく長井が考えていたものなのか……。それを田村は信用しているわけか……。

 まぁ、それぐらいではないと、圭や真の王をはめた策などできないか。


 長井と田村は……割と本当にしっかりとした信頼関係を築いているのかもしれないな。


「その演説が終了すれば、あとはチームごとに分かれて行動開始ということになります。チームごとの目的はさっき言いました。それに向かっていくのであれば、ぞれぞれの判断で動いていただいて構いません。


 もちろん、質問や相談などがあればいつでも受け付けます。あと、もし、敏和くんや圭くんのほうに仲間集めに関する話が来た場合、藤島さんに話を渡してください。


 武井くんも同じように頼みます」


 後の行動は個々に……正しくはチームごとに任せるということか……。まぁ、といっても圭や森が好き勝手に動くことは基本できないな。ペアが田村の息を受けた者たちだ。

 下手な行動を持っても田村に伝わってしまう。


「以上で説明は終わりです。何か質問ありますか?」


 特に質問はないかな……。というより、軽い気持ちで参加するのが立場的に一番いいとも思っている。対外のことは長井に任せておけばいいだろう。

 田村の言った通り、ひとまず圭がやることは、演説する長井の後ろに突っ立っていることだけで十分だ。


「じゃぁ、質問を」

 そういって手を挙げたのは森。自分の仮面を指でつついて見せる。


「この仮面、つけたままで行動していいんだよな?」


 田村はしっかりとうなずき笑みを浮かべる。

「えぇ。もちろんです。といっても、わたしが取れといっても取る気はないのでしょう? 君の立場や思いは十分理解しているつもりです。そのままで結構ですよ。


 ただ、しいて言うなら、仮面をつけた人物が藤島さんの隣にいれば、否応なく威圧感を放つというのは少し思いますね。できるのであれば、アリスさんはあくまでサポートに徹していただけたら幸いですかね。


 藤島さんには人望を集めて頂きたいので、できれば怪しい君の姿を表に出すのは控えて頂きたいですね」


 ……そんなことなら、そもそもそこに森を置かなければいいものの。森は田村の横において、武井と藤島さんでペアを結ばせれば、一番ことがうまく進むはず。


 しかし実際のペアはこう……。田村は一体どういう意図でこの組み合わせを選んだのだろう……。少なくとも、今すぐ理解できそうにはないな……。


「なかなか……難しい話だな……。というより……あんまりわたしに動いてほしくない、という言う風に聞こえるんだが?」

 しかし、森はふとそんなことを口にした。


 本人だからこそ気づく話か……。


「……結構鋭いですね。そういった意味合いも少しはあります。申し訳ありませんが、この中で一番信用ならないのは、残念ながらアリスさん、あなたですからね」


 ……本当にそうか? 表向き信用していると言った小林圭に対してのほうが、よっぽど信用ならないだろう?

 ……いや、一度敗北し戦意を意思なった圭と、まだ自ら動く意思をも続けている森なら……森のほうが……。


「だったら、わたしを自分の隣に置けばそれでいいだろう?」


 ごもっともな質問だった。だが、それに対し田村は鼻で笑った後、不敵な笑みを浮かべる。

「それこそ、悪手でしょうね。三チームの中で一番要なのはわたしのチームですから。そこに不確定な要素を入れるのは避けるべきと判断しました」


「……まぁ、いい。別にわたしだって必要以上に探るつもりもない……。とにかく、言われたことは遂行しておくとしよう」


 森は田村の真意が別にあると思ったのだろう。圭も同意見だ。だけど、それを必要以上に探る必要がないというのも同意見。

 与えられた任務を今はこなすとしよう。

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