第16話 作戦会議


 合流した三人は、今後の作戦を立てるべくレイアとパーシバルのいる教会へ戻った。


「さあ、どーするんだこれから!」


 ログリオは、教会内の長椅子に大股を開けて座る。


「……神の前でその態度はいただけないね」


 パーシバルが、その猫目を更に細める。


「ケッ! あいにく俺は神など信じていなくてね。そんなもんはあんたらアリスト教徒たちでやってくれ」


「……ならば、場所を移そう。ここで、無礼な者を迎えると不敬にあたる」


「時間がないんだ。アンタが外すのは勝手だが、俺が移動するのはゴメンだね。なんなら、そこの像をぶっ壊してもいいんだぜ?」


 鋼鉄鎧の戦士が大きな戦槌を聖母テレサ像に構える。


「そうか……どうやら君は死にたいんだね」


 そうつぶやき、白銀鎧の騎士は剣を抜く。


「待ちなさい、パーシバル。ログリオさんのおっしゃる通り、今は移動している場合じゃないわ」


「……はい」


 悔しそうな表情を浮かべ剣を収めるパーシバル。


「はははっ、嬢ちゃんわかってんな」


「……さっ、作戦会議を始めましょう」


「おい、こんな小娘がなぜ仕切る?」


 先ほどまで黙って見ていたナイツが口を出す。


「私はアリスト教徒内では聖女の位にいます。まだ、若輩であることは認めますが、不足はないはずです」


「それは、あんたらアリスト教徒内でのことだろう? 俺たちにとっては単なる小娘だ」


「なっ……」


 またしてもパーシバルが立ち上がる。


「黙ってろよ、嬢ちゃんに飼われてる犬が」


 ロドリゴが前に出て挑発するような笑みを浮かべる。


「……貴様っ!」


 そもそも、アリスト教徒と裏ギルドは水と油だ。互いに縄張りを持ち、不干渉が基本。境界線では殺し合うことさえある間柄で、協力し合うことなどもっての外だ。


 そんな中、


「やれやれ、本当にくだらないな」


 事態を見守っていた闇魔法使いがつぶやく。


「んだとっ!?」


 ロドリゴは殺意を込めた表情で睨む。


「筋肉バカは外で正座でもして待っていたまえ。君の脳ミソだと参加する価値はないから、あとでそこの仕切りたがり屋に聞くといい」


「はぁ!?」


 あまりにも酷い罵倒過ぎて。


 その脳みそが追いつかない筋肉バカ戦士。


「……誰が仕切りたがり屋だ?」


「君以外にいないじゃないか、ナイツ君。そこそこの魔法使いが有能なフリをして噛みついて。まさか、聖女の位にいる者がどれだけの実力か、それを知らぬほど君も勉強不足ではあるまい?」


「……ぐっ」


 ナイツは悔しそうに長机に座る。


「ありがとうございます。助かりまーー」


「パーシバル君もだよ。君は犬なんだから、行儀よくしていなければいけないよ。筋肉ゴリラと知ったか狐にキャンキャン言われたからってムキになって。まったく君は調教が足りていない。あんまりにも我慢できないならご主人様に首に縄でもつけてもらった方がいいんじゃないかい?」


「……っ」


 あまりにも暴言過ぎて。


 その場でなにか言うことすらも忘れてしまう犬呼ばわれ騎士。


「まあ、しかし君も悪いよレイア君。聖女聖女って、鼻持ちならない称号を掲げて相手に『察せ』と強要するのはアリスト教徒たちの傲慢だよ。だいたい君が聖女という柄か? 暴力的な性格かつ破滅的に乱暴な寝相をしているのだから『人格破綻女』くらいがちょうどいいんじゃないのか?」


「なっ、なっ、なっ……」


 即座に光魔法でこの闇魔法使いを浄化しようとする聖女は、隷属魔法のせいで、身動きが取れない。この時、改めてレイアは我が身を呪った。


 そして、性格最悪魔法使いは一瞬にしてその場全員を敵にまわした。


「まあ、君たちは本当に和を乱すことが好きらしいね。もう一度いうがこの討伐はチームワークが必要になってくる。無駄に、無益に、無理にそれを乱すのはやめて欲しいね」


「「「「……」」」」


 お前が言うな、と四人は思った。


「まあ、どうしてもと言うのなら僕がリーダーになってーー」
















「「「「いいえ、結構」」」」


 四人の声は、見事に一致した。



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