wumin様の『明日、終末』
では感想を。
まずはこのwumin様の『明日、終末』という作品ですが、タイトル通り、明日世界が終わる。という内容になっております。
そして、その明日を迎えるため、最後の1日を佐伯 千穂の視点で話が進む物語となっております。
世界が終わってしまう。そんな異常事態に面した時の人々の心の動き、行動、さらには『世界とは何か』の問い。短編であるにもかかわらず、3000文字の中にたくさん詰まっています。
そんな『明日、終末』ですが、私は全てを読んで、ああ、正常な人が1人もいない。と、思いました。
明日終わってしまうという状況で、欲に走り、自暴自棄になる人々、千穂に一緒に逃げようと説得する友人の朝香が、本来ならもっと時間をかけることや社会の性質上、口に出すことを憚られることを口に出し、行動してしまうこと。
そして、明日終わる世界をどこまでも冷静に、その是非を問うてしまう千穂。
本来なら……いえ、ただの日常を謳歌しているだけなら出てくることのないかもしれない思考の羅列、それらが明日世界が終わってしまうという状況の中で、それが人間の本質とでも言わんばかりに描かれており、文章から読み取ることが出来ました。
心の機微、というものは描写がとても難しいです。しかもそれが、『起きたこともない』もしくは『起こっても想像の仕様がない』ものだと特にです。
ですが、このwumin様の『明日、終末』は、文章を通し、描写を読み進めると、確かにそういう行動をしそう。自分ももしかしたら。と、千穂の言った言葉が合わさり、その状況に想いを馳せることが出来ます。
私はこの作品を通し、明日を迎えるのが怖くなりました。
明日終わってしまうなら。私はこの作品の登場人物と同じように、正常ではなくなってしまうのか。そんなことを考えてしまいます。
ですが、1つ勿体ない。というより、もっと書いてほしかったな。という描写があります。
短編で、内容的にそこに重点を置いているわけではないのは重々承知しているのですが、朝香が千穂に好意を持っている。そして、それを行動に移してしまう描写が物足りないと感じました。
まず突発過ぎることが1つ、次にその理由の描写の少なさ、行動を起こしてからのあっという間の展開、それが非常にもったいないと思いました。
1日という短い期間なのだから。と、なるかもしれませんが、今まで読んでいて、wumin様はどうにも心の描き方が非常に上手いと感じていましたので、そこの部分だけをおざなり、中途半端になってしまうのは少し残念でした。
と、最後は個人的な指摘になってしまいましたが、これでwumin様の『明日、終末』の感想とさせていただきます。
では皆さまもwumin様の『明日、終末』を読み、終わってしまう世界の心を読み取ってみてはどうでしょう?
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