破壊と創造

 それから私は神の先兵として、様々な世界に送られた。


 世界に溶け込み、世界を理解したうえで、必要があれば、破壊し再生する。

 それが私の、新たな女神としての役目だった。



 それぞれの世界では、人の姿となって溶け込み、様子を見る。

 その間は、こういった感じで、周囲の人間の心に作用し、世界の人間が害悪でないか探る。


 『傲慢ルシファー』は、心の隙間を埋める

 『嫉妬レヴィアタン』は、自分と相手の関係を調整させる

 『怠惰ベルフェゴール』は、心に落ち着きを与える

 『色欲アスモデウス』は、魅了する・させることで心を支える

 『憤怒サタン』は、生きるためのエネルギーを与える

 『暴食わたし』は、他者を理解することに努めさせる

 『強欲マモン』は、自分に無きものを求めさせる


 他にもそれぞれの司る欲望に準ずる独自の能力はあるのだが、私の能力は、老若男女問わず人気がなく、とくに若い女性には受け入れられたためしがない。


 いや、そうでもないか。

 いつだったか、どこかの世界で、泣いていた女性が、「美味しいよ、ありがとう、こんちくしょう!」と呟きながら、たくさんケーキを食べていた。


 心配になって、その一部を私の体に吸収してしまったが、余計なお世話だっただろうか?


 しかし、私はあの時嬉しかったのだ。



 このように世界の中で振る舞い、そしてある程度時代が経過したら、総括し、七人で再生するか否かについて多数決をとる。


 否決された場合は、その世界を去り、可決された場合は、その世界を滅ぼす。


 再生モードとなった私達はその世界の人間達と戦うことになる。


  『傲慢ルシファー』とは、幻惑をみせ、攻撃をさせない

  『嫉妬レヴィアタン』とは、反抗するものの心を折る

  『怠惰ベルフェゴール』とは、考えなくさせる

  『色欲アスモデウス』とは、心を読み先手を打つ、また同士討ちさせる

  『憤怒サタン』はその力で世界を破壊し、

  『暴食わたし』が、世界を喰らい虚無に還し、

  『強欲マモン』が、新たに世界を創造する


 私たちに、苦戦など無く、滅ぼせなかった世界、再生できなかった世界など、無い。


 『暴食わたし』はいつも、他の私が世界の住人を滅ぼし、『憤怒サタン』が世界を破壊した後に、壊れた世界そのものを私の体に吸収する。


 そういう役目だ。


 だから、私の中には、これまで私たちに滅ぼされた世界が、たくさんたくさん入っている。

 もはや悲鳴をあげるものもなく、静かな、それでいて、寂しい、今は動かぬ屍となった人間たち。

 それが、全て私の中にあるのだ。



 だから私は変わってしまったのだろうか。

 わからない――

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