第477話 霧島隊
更新遅れてすみません。少しペース早くするように努めます。
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【 楓・みく 組 2日目 PM 8:41 市街地D地区 】
ーー楓とみくがD地区を歩いている。ブルドガングを介して慎太郎からの指示を受け、世振という男との遭遇を避けるように言われた楓たち。最初に出会ったリッターたちとの大立ち回り以降、目立った戦いは起こしていない。ダメージも無ければ体力の低下、スキル使用回数の減少も無い。状態は至って良好。3組の中では戦力的にも恐らく最強であるこの組。このイベントを乗り切れるかどうかは楓とみく次第と言っても過言ではない。特に楓がどれだけ力を温存して合流出来るかが大きな鍵を握っている。
「このエリアってほんま広すぎやない?ウチ方向音痴やから1人だったら絶対迷子やわ。」
「確かにそうね。あそこに見える大きい城が無ければ目標も無いし冗談抜きで迷子よ。」
「やっぱあのお城が目的地なんかな?」
「そう捉えるのが自然よね。タロウさんたちも美波ちゃんたちもきっとあの城を目指してるはず。ま、ヤバいのもいそうだけどね。」
「セイエンだかなんだかって奴?」
「ええ。そいつが本当に話の通りのレベルの奴なら私たち全員が集まらないと多分勝てないわ。」
「それだけリッターの上の方の連中が強力って事やね。なるべく力を蓄えとかんと。」
「これまで通りなるべくプレイヤーは無視するわよ。リッターも出来れば無視。」
「りょーかい!」
ウチらは出来るだけ気配を消しながら街を移動する。レストランっぽいお店や果物屋さんに八百屋さん、お魚屋さんにお肉屋さん、様々なお店が立ち並ぶ。ここまで移動するまでにも同様のお店を見つけたけど中には何も無かった。食を提供するお店にも食糧は無い。ウチらはまだお弁当券あるから体力は大丈夫やけどタロチャンたちは大丈夫やろか。スキルも大事やけど体力はもっと大事や。飢えや渇きでタロチャンたちが苦しんでるかもしれへん。早く合流してみんなを助けなあかん。
ーーうーん、この子ホントいい子だよね。
暫く小走りで進んで行くと細い路地にたどり着く。裏路地かな。こういう所って誰か隠れてたり潜んでたりするかもしれんよね。
「なーんか、イヤな雰囲気するね。」
「それってこの裏路地の雰囲気の事じゃないわよね?」
「え?あ、うん。なんか急にゾワっとするようなイヤな雰囲気になったんよね。」
楓チャンが妙に険しい顔をしている。なんやろ?なんかあるんかな?確かになんか胸がザワザワするような変な感覚になっとるけど。
「みくちゃん、あなたイイカンしてるわね。」
「え?どゆこと?」
「向こうもちょうど移動していたのか、ここで待ち伏せていたのかはわからないけど、いるわよ。その角の所に。」
「ーーッッ!?」
楓チャンがそう言うと、隠す必要が無くなったからか強大な圧が裏路地の奥から解き放たれる。凄まじいプレッシャーに押し潰されそうになる。なんや。何者なんや。
「バレちゃったかぁ。魔力は抑えてたつもりなんだけどなぁ?」
隠れ潜んでいた奴が私たちの方へと姿を現わす。女の子2人や。1人は腰に剣型のゼーゲンを差している少し紫がかった髪色でクセが強いのか外ハネが特徴的なロングヘアーの子。もう1人は両手足が体術型のゼーゲンに覆われている青髪ショートヘアーの子。若い。ウチとそんな変わらんとちゃうかな。でも…リッターや。同じ制服みたいなん着とる。
「それだけ実力者って事よ。どちらも当代の”闘神”よ。」
「ウソぉ!?私もね、当時は”闘神”だったんだよ!!奇遇だねぇ!!」
紫髪のお姉ちゃんがウチらに話しかけるように言ってくる。
「剣型を持ってる方が芹澤楓。体術型が綿谷みくね。あー…そういえば綿谷は”闘神”から落ちてたわね。田辺慎太郎って男が入れ替わりで”闘神”に入って、綿谷は田辺の奴隷よ。」
青髪のお姉ちゃんから説明を受けると、紫髪のお姉ちゃんは凄く辛そうな、哀しそうな顔をする。
「そうなんだ…負けちゃうのは仕方ないけど男の奴隷は可哀想だなぁ…毎日毎晩男に犯されてるなんて…胸が痛むよ…」
「何を勝手な事言ってんねん!!タロチャンはウチにそんな事せーへん!!ウチを助けてくれたんやし、そもそもウチはクラン預かりやから奴隷とちゃう!!」
ーー慎太郎を悪く言われたように感じたみくは声を荒げる。リッターの2人はポカンとした表情でみくを見るが、すぐに笑顔に変わる。
「そうなんだ!!キミは奴隷じゃないんだね!!あー…良かったぁ…ホッとしたよぉ…」
紫髪のお姉ちゃんが心底安堵したような表情をウチに見せる。演技には見えん。ほんまにウチに対して心配してたような雰囲気を出しとる。なんか調子狂うな。今まで見てきた連中とは全然ちゃうやん。
「そんで涼子、このコらの魔力ってどれぐらい?」
「待って、測定器出すから。」
青髪のお姉ちゃんがポケットからスマホみたいなんを取り出し、なにやらそれを操作している。
「へぇ、凄いわね。測定器が限界値を示してるわ。」
「わぁー!!って事はS級じゃん!!凄い凄い!!」
S級ってなんやろ。魔力とかもわけわからん単語やし。ウチらランク分けされとるのかな。
「ま、S級っていってもそれを扱えなきゃただの飾りにしか過ぎないわ。まだ”選別ノ刻”にもたどり着いてないわけだし。それに…2人ともゼーゲンは3段階よ。」
青髪のお姉ちゃんにそう言われると紫髪のお姉ちゃんがウチらを見る。
「ホントだぁ。残念だなぁ。彼女たちとはもう少し後で戦いたかったなぁ。」
紫髪のお姉ちゃんが明らかに落胆したような表情をみせる。なんかムカつくな。ウチらの事ナメとるやん。
「黙って聞いてれば随分と勝手な事言ってくれるじゃない。私たちの事ナメてんのかしら?」
楓チャンが目を細めると身体から”気”みたいなもんをリッター2人に向けて放つ。
流石は楓チャンや。あの紫髪のお姉ちゃんの出してるプレッシャーを塗り潰しとる。
「へー!!ホントに凄いんだねキミ!!それなら私の力を解放しても戦意無くなったりしないよね?じゃあ出してみるね!!」
「はぁ?あなた何をーー」
ーー紫髪の女の目つきが変わると、楓の出した剣気を軽く塗り潰すような強大なプレッシャーを与えてくる。その力はあまりにも強大すぎて身震いするほどである。
だが、楓もみくも気圧されたりはしない。相手の実力こそ感じ取ってはいるが、戦意喪失までは到底いかない。しかし、女の力を感じ、嫌な汗が背中を伝っていた。
「楓チャン、ちょいとコレ、あかんのとちゃう…?」
「ま、楽は出来そうにないわね。」
ーー楓とみくはゼーゲンを手にし、戦闘態勢へと移行する。その姿を見て女は非常に嬉しそうな顔をする。
「うんっ!イイね、キミたち!その雰囲気が実にイイ!とっても強そう!楽しめそうだなぁ!あー楽しみ!あ、自己紹介がまだだったね。初めまして。リッターオルデン、ブルクグラーフの爵位を与えられしリッター、霧島隊隊長、霧島茜です!ヨロシク!」
ーー霧島茜も腰に差す鞘からゼーゲンを引き抜く。このエリア、2つの脅威の内の1つ、霧島隊隊長、霧島茜との戦いが幕を開ける。
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