第16話 メープル

「こんな感じでどうでしょうか?」


「どれどれ。」


俺は美波に頼んでスキルアップカードをトレードに出す為の募集内容を作成してもらっている。さっそく美波が作った内容を確認してみる。


【スキルアップカード1枚とダブルスーパーレア3枚を交換してくれる方を探しています。興味がある方は私の名前をクリックしてくれればメールを送れるようになってますので直接お願いします。 ナミ 】


「ナミ?あー、ハンドルネームか。」


「はい、ネットは怖いですから。」


「確かにね。でもすごいな。名前の所をクリックすればメール送れるようにできるなんて。俺には到底できない。流石は美波。」


「ふふっ。ありがとうございますっ。じゃあこれで載せていいですか?」


「うーん。枚数を2枚にしようか。」


「えっ?でも相場よりずっと安くなってしまいますよ?」


「早くSSに交換したいからさ。ほら、すぐに次のイベント始まるみたいな事をツヴァイが言ってただろ?だから早く美波の装備を充実させたい。それにイベントの開催通知が来たら攻撃系のスキルは値上がりするかもしれないしな。」


「確かにそうかもしれませんね。じゃあ『攻撃系スキルを含む』って文面も追加しましょうか?その方が交渉の時の手間も省けますし。」


「そうだね、頼むよ。」


「わかりましたっ!じゃあ…これでよしと。あとはどれぐらいで応募が来るかですね。早く来ればいいですけ…わ!もう来ましたよ!」


「マジでか!?」


「これがメールの文面です。メープルさんって方からですね。」



『初めまして、メープルと申します。掲示板を拝見して御連絡させて頂きました。私の出すカードは、攻撃スキル1枚と補助スキル1枚をと考えております。カード詳細につきましては申し訳ありませんが、交換時まで伏せさせて頂きたいと思います。御検討よろしくお願い致します。』



「文面的には凄いしっかりしてる人って感じだな。でも何でスキル詳細は教えてくれないんだ?」


「いくらハンドルネームだからといっても特定されたら手の内を見せる事になるからだと思います。相手が情報屋かもしれませんからね。」


なるほど。ネットが安全なわけないもんな。その場で相手を見極めてからじゃないと下手すれば自分の命に関わるわけか。プレイヤーがそこまで多くはないんだからサンプルを多く手に入れれば予想がつくもんな。


「美波のおかげでだいぶこのゲームの仕組みがわかってきたよ。とりあえずこの人と会ってみようと思うんだが美波はどう思う?」


「私もいいと思います。恐らく女の人だと思いますから尚更いいですね。じゃあ都合を聞いてみますね。」


「頼むよ。」


美波に返信を書いてもらいメープルさんからの返事を待つ。

だが、返信はすぐに帰って来た。


「すぐに返事をくれましたっ!」


「返事が早い人っていいよね。待つのが嫌いだからすごい好感が持てるよ。」


「わかりますっ!私も返信は早く欲しいですっ!…タロウさんからのは。」


うん。美波のブツブツはスルーだ。


「メープルさんは何て?」


「えっと…これです。」


『早速の御返信ありがとうございます。もしナミさんの御都合がよろしければ明日、東京のシックザールという喫茶店でお会いするのは如何でしょうか?御検討よろしくお願い致します。』


「東京か…俺は日曜は仕事休みだから行けるけど美波は明日大丈夫?」


「大丈夫ですっ!…タロウさんと旅行!」


「じゃあ明日行こうか。ここで場所をずらすと俺たちの住んでる範囲特定されそうだから嫌だしな。あー、この人それが狙いだからそっちから場所指定したのか。」


「どういうことですか?」


「東京って中心点を置くことでそこに来られない人間は場所を変更してくれとか、中間にしてくれとか言うでしょ?そうすれば相手の居住地を知れるじゃん。最悪の時はそいつを暗殺もできるしな。この人相当頭が切れるな。」


「なるほど…全然想像できませんでした…。」


「とりあえずは明日会ってみよう。そこまで慎重な人が騙し討ちなんてするわけないと思うし。」


「そうですねっ。じゃあそう返信しますね。時間はお昼ぐらいでいいでしょうか?」


「そうだね。じゃあ終わったら明日に備えて早く寝ようか。」


「はいっ!あ、一緒のお布団で寝てもいいでーー」

「ダメ。」


「むぅ…!」


さて、明日は忙しくなりそうだな。








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