自動書記的散文、あるいは記憶の無意識的整理現象
浅川多分
生業
僕は、街中の野良犬を追いかけて、町外れにある洞窟まで追い込む事を生業にして今まで生きてきた。追い込む洞窟は、僕のおじさんが番人として働いている馴染みの洞窟だ。今日も5匹の犬をまとめて追い込んで、25,000円もらった。
追い込んだ犬がどうなるかは、よく知らない。でも、なんとなくだけれど、いつもお昼に食べさせてくれるホットドッグの材料になっていることはわかっていた。それに気付いた時は少し気持ちが悪い気がしたけれど、美味しかったし、すぐに気にならなくなった。
帰り道。またしても野良犬を見つけた。これも追い込んでしまおうかと悩んでいると、その犬が道端に落ちていたホットドッグを食べている事に気が付いた。なんだ共食いじゃないか! と思うと、途端に気持ちが悪くなって、自分が今までしてきた事がとても悪いことのような気がしてきた。しかし野良犬を街に蔓延らせる訳にもいかない。
そこで僕は、手に持ったバットで、犬を空の彼方へ向けてかっ飛ばす事にした。小学生の頃は、ホームラン王として名を馳せた僕だ。球よりも遅い的をジャストミートする事は容易い。
思い立ったが吉日だと、さっそくその場でバットをフルスイング、その野良犬を空高く打ち上げた。飛んで行った犬が、視界の中でどんどんと小さくなり、空にかかる分厚い雲に消えたその刹那、犬が消えた箇所を中心に、大きく雲が晴れた。僕の目の前に、目眩を覚えるほどの青空が広がった。
犬を空に打ち上げることで、天気を変える事が出来ることに気が付いた僕は、これを生業にする事に決めた。
了
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