【第10話】 そうと決まれば善は急げだ。(まぁ、『善』かどうかはわからないが…。)


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


オレ・春埼隆人は異世界アルファザード(惑星アルファザード)の『リムルネールの街』の宿屋に、パーティーメンバー(スキンヘッドでマッチョな3人の男たち、ガギク、サジス、タジツ。)と一緒に泊まっている。

時刻は夜の11時過ぎ…3人はいびきをかいて眠っている…。


冒険をはじめてから一週間、(理想の冒険とは程遠い)地味なクエストばかりをこなしていた…。


スキル【鑑定】で調べてみたところ、ガギクたち3人は『運』が悪く、そのせいで地味なクエストしか当たらないようだった…。


それに、理想では美少女たちと冒険のはずが、現実ではスキンヘッドでマッチョな男たちと冒険を繰り広げている…。

( しかも、『冒険』と呼べるのかすら疑問な地味なクエストばかり…。 )


今回のこの冒険は失敗かもしれないな…オレはそう思いはじめていた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


いや、まぁ、ガギクもサジスもタジツも悪いヤツらじゃないんだけども、前述のように3人とも『運』が良くない。


それに、オレの(冒険の)理想像からは、ちょっと…ってか、だいぶかけ離れている…。(主に、性別とルックスが。)


今の現状から理想像まで挽回するには、スキル【現実改変】でも使わなけりゃ無理だろう…。


…いっそのこと、【現実改変】を使ってしまおうか…

例えば、まず、パーティー全員の『運』を200(%)くらいまで上げて、

更には、ガギクたちスキンヘッドのマッチョ3人組を『最初から(生まれた時から)美少女だった』ことに改変してしまうとか…


…いや!! ダメだ!ダメだ!


スキル【現実改変】を使うということはRPGを違法改造プレイするのと同じようなことでオレの主義に反するし、今回の冒険に出る前にファイナやアイネやヒーリスの前で【現実改変】と【時間逆行】と【未来視】は(極力)使わない宣言しちゃったしな…。


それに、もし仮に【現実改変】で3人が『最初から(生まれた時から)美少女だった』ことに改変したとしても、スキル【現実改変】使用者であるオレだけは改変前の記憶(『改変前は3人ともスキンヘッドでマッチョな男だった』という記憶)も保持することになる。

美少女になったガギク、サジス、タジツを見ても、そのたびに

『 こいつら…【現実改変】使う前はスキンヘッドでマッチョな男だったんだよなぁ… 』

と思ってしまうだろう。

これはこれでキツイ。


それに、ガギクたち本人の了承もなしに勝手に(スキンヘッドでマッチョな男→)美少女に変えてしまうのは、少々気が引けるしな。






色々と考えてるうちに時刻は(夜の11時→)0時になってしまった…。


だが、この一時間、熟考して、オレはひとつの結論を出した。

『 いったん、空中神殿に戻って、仕切り直そう! 』

と…。


そうと決まれば善は急げだ。(まぁ、『善』かどうかはわからないが…。)

3人には申し訳ないのだが、スキル【記憶操作】を使用して、オレに関する記憶は消させてもらった。

また、3人だけじゃなく、宿屋の主人やギルドの受付嬢なども含むオレと接したことのある人間全員からオレに関する記憶を消去した。

更に、ギルド内に保管されているオレ『リュート・ハーサキ(偽名)』の書類も、スキル【千里眼】で探して、スキル【消滅】で消去しておいた。

( 今やってることって『スキル【時間逆行】で時間を一週間前に戻すこと』と同じかも?

…とも、ちょっと思ったが…まぁ、スキル【時間逆行】そのものを使ってるわけじゃないし、ギリセーフとするか… )


「 …じゃあ…一週間っていう短い間だったけど、3人とも色々ありがとうな。 」


オレは、いびきをかいて眠っている3人に一礼した後、スキル【空間転移】で空中神殿に戻ったのだった…。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


『 スッ… 』

オレの身体はスキル【空間転移】によって、一瞬の内に空中神殿内部に転送された。


「 ただいま~…って、もう0時まわってるから、さすがに寝てるか… 」

オレは一人つぶやいた。


…が、何やらリビングのドアのガラス窓から明かりが漏れている。

( 空中神殿は、全面積の3分の2ほどのスペースが大理石の床に大理石の柱がそびえ立つギリシャの神殿のような構造になっている。 が、残りの3分の1ほどのスペースはファイナたち女神の居住スペースになっており、リビング、キッチン、寝室、風呂、トイレ、等、生活に必要な部屋・設備は一通り揃っている。 )


「 ただいま~…まだ起きてるのか…? 」

そ~っとリビングのドアを開けてみた。


すると…そこには…意外な光景が広がっていた。

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