前提条件の確認
仮説の検証を行う前に、まずは前提条件の確認を行うことにした。
検証は聞き込み調査初日の夜。六名の聞き込みを終えたあと川沿い亭の厨房で実施している。
ディアヌさんにお願いし包丁を借り、鋭く研いで自分の手を切ってみたのだ。
刃物を研ぐのは久しぶりだった。子供の頃は木を削っておもちゃやプロペラを作って遊んでいたこともあり、ナイフの扱いには慣れているつもりだったのだが、さすがに二十五年ぶりともなるとコツを思い出すのに少し時間がかかってしまった。
包丁は少し錆が浮いていたものの比較的状態の良いものだった。僕はその包丁を丁寧に研ぎ上げた。二十五年前なら十分な切れ味だったことだろう。
結果は当然ながら、包丁は僕の左手を切るどころか小さな傷をつけることさえできなかった。
この検証は神の偉大さをただただ再確認する結果となった。そこには刃物が神に禁じられ役に立たないという当たり前の現実が、ふてぶてしく横たわっていた。
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