隙間時間に読める30秒ストーリー

龍乃蛇

勉強してる

 冬。寒空の下で二人の高校生が信号を待っている。

 

 「いやさすがにさみいわ」

 

 「絶対に肉まんとか買うべきだったじゃんよ。何でからあげ棒なんだよ」

 空腹を満たすために選んだものを間違ったのでは、と二人して駄弁する。

 

 「あ、信号青やん。帰ろ」

 

 「もうちょい落ち着けて。もちつけて」

 

 「餅はつかんよ?」

 

 このやり取り、実は14回目である。

 

 「受験かあ…。こんな遅くまで勉強しとるとか、信じられん」

 

 「去年とか一昨年じゃ考えられんな。あ。赤なった。にしてもさンみいな」

 

 「…三位一体説?」

 

 「…アタナシウス派な」

 

 「つまりニケーア公会議?」

 

 「325年、コンスタンティヌス帝な」

 

 「…覚えきらんて」

 

 「そこはがんばれ。さみい」

 

 センター試験まで、残り一か月。

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