§

 三栗隆文様へ。


 前略。先日は、五色沼へ連れて行ってくださり、ありがとうございます。

 話には聞いていましたが、あんなに色が違う沼がたくさんあるだなんて、実際に目にしてとても驚きました。

 わたしはみどろ沼の色が、ありのまま、っていう感じがして一番好きかもしれません。なんとなく、命がたくさん宿っているような気がしたのです。

 それから、トレッキングコースを歩いている時に、着いてきた葉踏み鹿が、本当に本当に可愛いって思いました! ずっと着いて来て、足音を鳴らすのに、全然姿を見せないんですもの、恥ずかしがり屋でさみしがり屋な、店主さんの小説に書いてあった通りの未言ですよね、とってもとってもかわいいです。

 あれは確かに姿見せない木霊ですね。もしかしたら、昔の人も、葉踏み鹿の歩く音を聞いて、木霊の存在を知ったのかもしれませんね。


 かしこ


 丹堂妙乃

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る