第12話 1ヵ月
家を出た私の悪行は、酷くなる一方で、押しかけていた先の友だちの家族も、
眉を顰めだした。
そこにタイミング良く現れた忍ちゃんを逃す私ではなかった。
彼が先輩から部屋を借り受けて、まだ3日と経っていなかったからだ。
友だちの家族は、今までのお礼と拠点を移す挨拶をした私を、
引き留めてくれた。
私の悪行の数々を、全てではなくとも気付いていたからだ。
『このまま出て行かせていいものか』と。
ありがたかったが、これ以上迷惑を掛けられないとも思った。
私は、自分の悪行を辞める気がなかったからだ。
私の悪行三昧がバレて警察沙汰になったら、
母が、この友人の家族に、どんな態度で何を言うか。
簡単に想像できたからだ。
母が、この友人の家にいるだろうと知っていて放置している事に
私も友人の家族も気付いていた。
友人の家族が想像したように、私の悪行は益々エスカレートした。
友人の家の近所だったので、友人は心配し毎日のように訪れた。
けれど私は心配をよそに好き勝手に過ごしていた。
私は3日と空けず小田急線に乗り、『品物』を調達し、
2日のうちどちらかは記憶を飛ばしていた。
金が底を尽きそうになると、怪しげなバイトへ出掛けた。
仮の家主の忍ちゃんは、夕方前にバイトへ行き、深夜に帰ってきていた。
正体を保っていられる日は、忍ちゃんのゴハンを作った事もあった。
真夜中に火災報知機を鳴らす騒ぎを起こしてしまった時も
彼は怒らなかったが、彼は先輩に怒られたらしい。
短い期間ではあったけれど、
何物にも縛られず自由に自分勝手に過ごせたのは、
今までで、この『1ヵ月』だけだったかもしれない。
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