宇宙生活の終焉 4
カラオケ好きのマリーは持ち歌が多い。そのすべてを披露する勢いでマイクを離そうとしなかった。
「お姉ちゃん、あたしまだ一回しか歌ってない」「俺なんて一回もだぞ」と妹、義弟が抗議しても「婚礼の主役は新婦でしょ」と譲らない。その顔は全体が赤らんでひどく陽気だ。
彼女が熱唱するなか、ソファーで僕の隣に座る叔母さんと母さんが「姉さん、どれだけ強いの飲ませたの」「一番弱いものよ。少量だし問題ないはずだったわ」「もうあの子ったら。飲み慣れていないとはいえあんな量でできあがるなんて」と娘のあられもない姿を嘆いた。
その後、彼女はいきなりゲーム大会をひらいたり、酔ってうまくプレイできず勝手にチェス大会に変えたり、それも滅裂な指しかたでミリーにも負けて、「そうだ、お嫁さんとしての最初の手料理を食べてもらおう!」と思いたって、外は黒焦げ、なかは生焼けのホットケーキらしきなにか(しかも無駄に量が多い)を僕の前に出し「さあ、召しあがれ」と強要したり。
なんだか彼女はさっきよりも顔が赤く、ふらついてさえいた。ミリーが「お姉ちゃんね、料理してるとき、ドリンクサーバーでこっそりなにか飲んでた」と耳打ちする。キッチンドリンカーかよ。
そしてとうとう、吐いた。
トイレのほうから、うえええ、という盛大な声が聞こえてきた。今度こそ僕も引いた。
叔母さんが彼女を寝室へ連れていったあと、母さんがみんなに告げた。「残念なお姫様はご退場あそばされたわ。パーティーはこれにておしまいよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます