最初で最後の告白 6

 僕はおもむろに玉座に歩み寄り、座った。


 灰色の街が眼下に広がる。遠方の空に、釘づけになった飛行機が見えた。

 マリーの指輪を、自分のそれと触れるようしっかりと同じ指にはめる。指先がぷるぷると震え何度か落としそうになった。落ち着け、落ち着け……。


 玉座の肘かけに両手を乗せる。

 ――これが王様の気分だって? 冗談じゃない。まるで電気椅子にかけられる死刑囚だ。

 顔面は蒼白だった。浅くせわしく呼吸する。こめかみから脂汗が滑り落ちた。


 最期だ。今ぐらいは自分の気持ちに素直になっておこう。深く、息を吸い込む。



「 僕はマリーが好きだ!


  親友として好きだ!


  異性として好きだ!


  君 が 大 好 き だ っ ! ! 」



 ありったけの思いを、声の限りをつくして吐き出した。

 モノトーンの展望台に自分の声が反響する。誰も聞いていないのに頬が熱を持っていた。

 はは、こんなときだってのに、気のきかない月並みのことしか言えないもんだな。僕らしいや。

 でもこれで、数えきれないほど残る悔いをひとつだけ減らせた。



  さよなら、マリー。



「時間よ、動きだせっ」世界に、色彩が戻る。「マリーと入れ替われ!」

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