27 最初で最後の告白

最初で最後の告白 1

「止まれっ!!」考えるより先に叫んでいた。


 刹那。思いもかけない光景が視界のすべてに顕現する。



 モノクロームの一色に染まった世界。



 展望台のフロア内も、ガラスの向こうの街並みも、山も、空も、僕以外のあらゆるものが色を失っていた。


 下界を飛んでいる鳥が羽を広げたまま静止している。吹き荒れる嵐に流れの速い雲が、写真のように切れはしひとつとして揺らがない。


 足もとに目を移す。

 顔だけ上げ、倒れたまま微動だにしないソフィア先生があった。

 色あいといいまるで石像だ。


 ありえない――僕は否定する。

 だってコクーンの夢は、この宇宙を律する物理法則を高精度で模倣し、(僕たち船の乗員によるいくつかの例外を除けば)現実世界で起こりえない現象のいっさいを排除するよう構築されている。母星の環境を、限界まで忠実に再現することを目指した巨大シミュレーターだ。

 その、仮想現実と呼ぶにはあまりにリアルで広大な空間に、今、発現している、理解を超えた事象――


 僕が、コクーンの夢このせかいの時を止めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る