クコの浮気 2

 資料室に向かう廊下で、プライは僕の横について口数多くしゃべった。


「先輩は去年も生徒会に入ってたんですよね。あたしは今年が初めてなんですけどー、生徒会長がそんなに偉くなくてびっくりしちゃいました。もっといばってるかと思ってたのに、こうやって雑用とかやらされて」


 確かに生徒会長はなんでも屋だ。生徒会活動の企画立案から調整役、伝達係、掃除、片づけ。人の上に立つというよりは、まんなかでなんでもかんでも任されてる感じだ。


「すごいですよねー。生徒会長で野球部キャプテンで。漫画のエリートキャラみたい」

「部活は零細の部なんだけどね」

「でも先輩は超うまいんですよね。聞きましたよ、小学校のリーグでエースだったって」


 野球は小学生の間ずっとやっていた。好きだったから部が弱小でも入った。弱いだけでなくモチベーションも低めなのには驚いたけど。


「成績も優秀で、そりゃマリー先輩も惚れますよねー」


 マリーとの関係に話がおよんでどきりとした。嫌な予感がする。知らず知らず歩調が速くなる。


「生徒会に部活にデートと大忙しですね」

「せ、生徒会や部活は毎日あるわけじゃないから」


 デートの頻度には触れなかった。照れがあって口に出すのもはばかられる。やましいことはないのにいたたまれない気分だ。


「マリー先輩の足が治るまではお預けですね」鼠をなぶる猫のように彼女はにやついた。「代わりにあたしとデートしませんか」

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