僕たちの婚約 3

 外宇宙探査船団。

 それは文字どおり、星系の外の領域の観測、調査を目的とした一団だ。

 八機の宇宙船に八家族が乗り込み、各家族の間で最適な子孫を残しながら世代交代して航行を続ける。これにより現在、僕や彼女の、第六十四世代まで絶えることなく船団は存続してきた。

 順風満帆というわけにはいかなかった。家族単位で宇宙船を分けられた理由は、不測の事態に備えることにある。万が一、航行不能の宇宙船が出た場合、その船を船団から切り離すシステムになっている。

 プロジェクトでは、脱落機の発生する確率は統計上、千世代で一機あるかどうかと見積もっていた。実際は百世代とたたないうちに僕と彼女の二家族に激減した。破綻寸前だ。


「マリーは考えないの? 僕たちの未来、この船団のゆく末を」

「クコはものごとを長い目で見てるんだねー。偉い偉い」


 丸めた僕の背を彼女はぽんぽんと叩く。


「そうやって人をからかう」

「からかってなんかないよ。お父さんたち大人もたまにそのことについて話をするし、だいじな問題だと思う。でも結局、私たちにどうこうできるレベルじゃないんだし。私やクコにできるのは、結婚して世代を絶やさないことじゃない?」


 彼女を振り返って見ると気負わない笑顔があった。僕なんかよりずっと達観してる。


「なんか君にはかなわないよ」

「でしょー。敬意を表するのよ」


 えへん、と彼女が胸を張ったとき、母さんがリビングに顔を出した。いつもマルーンカラーの髪をひっつめにしている。


「ご飯よ。マリーも食べていきなさい」

「はーい」と立ち上がって、彼女はとたとたとダイニングに向かった。自分の家と変わらないノリだ。

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