センス

 王国の騎士を辞して旅に出た男は、ひょんなことから出会った身寄りのない少女と行動をともにしていた。


「わ!」


 考え事をしていた少女が道端の石につまずく。転んだ拍子に着ていたローブの左袖がめくれ、白い腕があらわになった。


「あ……」


 少女はあらわになった腕を慌てて隠したが、元騎士の目は既にそれをとらえていた。


「その腕のアザ……いや! その腕の紋章は王族の証! お前……いや、あなたはまさか、王家に名を連ねるお方なのでは!?」


「ま、まあ、そんなとこかなあ」


「なんてことだ……。なぜ今まで、隠しておられたのですか!」


「だ、だって……。だって!」


 瞳を潤ませ、声を詰まらせながら、少女は言った。


「デザインが、かわいくないんだもの!」

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