第6回 警察官

 「ヒトの集まるところでは、どうしても犯罪が起こってしまいます。そういう悪事を取り締まって、平和で楽しいジャパリパークを守る縁の下の力持ちをしていたと言えますね」

 こう語るカツラギさんは、かつて新西之島警察署に勤務し、ジャパリパークの治安を守っていた警察官であった。彼もまた、フレンズと向き合い、フレンズのために働いていた一人である。


・観光都市ならではの事情

 ジャパリパークという複合娯楽施設を産業の中心としていた旧・新西之島市(現・小笠原村新西之島)は、国内外からの観光客が多く訪れていたため、一都市としては尋常ではない数のヒトの出入りがあった。幸いにして、他の地域と地続きではなくフェリーか飛行機しか交通手段がなかったため、無秩序という訳ではなかったものの、多くの観光客が集まる場所では厳重な警備が行われていた。

「空港や港と言ったパークの玄関口ではかなり厳しいセキュリティチェックがなされていたと思います。くわえてパークセントラルのような人気観光スポットでのパトロールもありました。テロの発生や犯罪組織の活動があっては、観光客も楽しめないし、フレンズも日常を送れませんからね」


・巻き込まれぬように

 対策をとっていても、事件が起こることはある。そしてその場にフレンズが巻き込まれることも決して少なくはなかった。

 例えば、フレンズを相手にした暴行。フレンズの身体は一般的なヒトに比べ頑丈であるため大事に至るケースはほとんどなく、加害者が逆に取り押さえられて終わることが多かったが、中には戦うことに慣れていないフレンズが一方的に被害を受けるということもあった。

 反対に、フレンズが犯罪に荷担してしまうこともあった。鳥のフレンズに中身を知らせずに違法な物品の輸送を依頼したという事件が起こったこともある。

 このような事件を防ぐために、飼育員と協力して、定期的にフレンズを対象とした防犯教室が開かれていた。カツラギさんも講師として参加したことがあるとのことだ。「動物だった時と、ヒトの社会の中にいる時では勝手が違いますからね。残念ながら、すべてのヒトが信用できるわけではない。怪しいヒトがいたら逃げるか信用できる者を呼ぶといった、彼女達が安全に暮らすための対策を教えていました」


・フレンズの協力

 犯罪を防ぐために自主的に活動を行うフレンズもいた。パーク内のパトロール活動を行う組織が複数存在しており、飛行能力や優れた嗅覚など、フレンズならではの長所を生かしてパークの治安維持に貢献していた。

「セグロジャッカルの子とはパトロールをしている地域が被っていて、挨拶がてらに情報交換なんてこともしていましたね。逃げたひったくりを一緒に追いかけたこともありましたが、足が速くて自転車で追いかけるのが一苦労でしたね」と笑いながらカツラギさん。彼が言うように、フレンズによる協力によって事件が解決した例も多数あった。「パークのためにできることをしたい、そう思う仲間がいたんです。心強かったですね」


・輝くものを守る仕事

 警察官は転勤の多い職業である。カツラギさんはパーク閉鎖の前に別の地域の警察署に異動になったため、パークで働いていた期間は数年程度だ。それでも、彼のしてきた仕事の中で一番印象に残っているのは、観光客やパーク職員、そしてフレンズのために働いていた時だそうだ。

「他の勤務地ではできない貴重な体験ができたと思っています。夢とかワクワク感とか、きらきらと輝くものを守っていたような気がしますね」そんなことを言うガラではないと照れ笑いをするカツラギさんは、パークを大切に思い輝きを守るために働いていた、の下の力持ちだったのだろう。

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