巣篭もり

 四月過ぎ。

 閉め切っていた雨戸をようやく開ける。

 ――と、戸袋の中に鳥の背中が見えた。

 ねずみ色の毛並み。

 ベッカムヘアのような鶏冠みたいな頭。

 嘴や脚がピンクっぽい色をしている。

 体長は二十センチほどだろうか。

 雨戸を一枚、戸袋に入れた状態では中は狭い。

 振り向くことも難しいだろう。

 そもそも鳥は、後ろに歩けないはず。

 雨戸を出して助け出してあげたいのはやまやまなれど。

 ここは二階。

 おまけに窓の下には屋根がない。

 雨戸を閉めて、しばらく待てば自分で出ていくのではないだろうか。

 そう思って雨戸を閉め直し、しばらく様子を見ることにした。

 十分ほどして確認すると、先程と変わらず背中を向けている。

 もう暫く待つことにした。

 発見してから三十分が過ぎ、いまだに出ていこうとしない。

 こうなれば強硬手段しかない。

 雨戸を一枚入れ、雨戸を引く。

 雨戸に引っかかりながら、ずるずると戸袋出口まで引きずり出す。

 鳥と目が合う。

 ここはキミのいる場所ではないから出てお行き。

 そう声をかけると、なにも言わずに飛び立っていった。

 戸袋の奥の方には、草やら藁やらが詰まっているのが見える。

 知らないうちに、巣作りをしていたらしい。

 このまま放置していたら完成してしまう。

 卵を産んでしまうかもしれない。

 そうなる前に取り除かなければ。

 危機をひしに感じ、急いで戸袋の掃除をした。

 また、他の雨戸の戸袋も確認。

 同様に巣作りを始めた形跡があったため、そちらも掃除を施す。

 掃除後、外では鳥たちが騒がしく鳴き続けていた。

 雨風しのげる絶好の巣篭もり場所を見つけた鳥たちには悪いけれど、こちらとしても見過ごすわけにはいかない。

 卵や雛がいる巣を取り除くのは法律違反となるからだ。

 それにしてもあの鳥はなんだったのだろう。

 調べてみると、容姿からヒバリと思われる。

 だが「ヒバリは地上に巣を作る」とある。

 調べると、戸袋に作るのはムクドリが一般的とあった。

 が、そこまで大きくはなかった。

 ヒバリのように、気楽に出かけられる日が早く訪れますように。

 

 

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