真っ青な空は

 雲ひとつない晴れ渡った空は、たしかにきれいだともうつくしいとも思うのだけど、あまりに、あまりに真っ青なので、なんだか不安になってくる。そのまま真っ逆さまに吸い込まれてしまいそうなのだ。

 たぶんあの空はいちばん天国の景色に近い。原罪がないころの人間はああいう景色のエデンに住んでいたのだろう。物語は始まらず、だから終わりもしない。それは完璧な円に似ている。

 だが実際には、社会は世界は円が欠けたからはじまったのだし、そもそも天体の運行はほんとうは楕円で、物語はいっぱいあって、だから私は雲のある空に引き込まれるのかもしれない。

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