エピローグ
夕焼けを想像した。
一日のなかでいちばん好きな、あの時間のことである。教室の窓辺に立ち、下校する生徒たちを見送る。午後四時半から始まる虚しさを、ぼくはたいへん愛していた。
茜色が燃えるとき。ぼくだけの時間。
皮肉なことに、彼女と最初に会ったのもその時間だった。
命のないだれかを殺したばかりの女の子がそこにいて、ぼくの時間はもうぼくだけのものではなくなってしまった。共有なんて生易しいものじゃない。奪われたというべきかもしれないけれど、自分に彼女を責める資格なんてないのはわかっていた。
彼女はただ、零れ落ちたようにそこに立っていただけだ。それは決して悪いことじゃない。
少し難しい話だったかな。
もしかしたらきみは、まだ理解できないかもしれない。たぶん、死ぬまでわからないと思う。だからまた明日話そう。明後日も、この先もずっとだ。何度でも教える。
お誕生日おめでとう。
とにかく、ぼくはその時間に彼女に出会ったんだ。
だから夕焼けを想像するとき、ぼくはいつも安藤さんを思い出す。
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