第29話 魔剣ヴァージンブラッドソードの脅威に精神力を消費する2

「なんだ、貴様らは! ここから先は関係者以外、立ち入りは許されていない!」

「旦那、正規せいきの騎士様が護衛しているが……どうするんでぇ?」


 被害に合った魔法騎士が運び込まれた場所を捜索中。


 騎士達が厳重に見張りをしている建物を発見した。


 【スキル発動 催眠術 対象の人物を催眠状態に】


「お疲れちゃんです! 関係者でーす! 通してください!」

「……そうか、通行を許可する」

 

 これだけ厳重だと逆に居場所を特定されてしまうな。


 セキュリティーの面で不安を感じざるを得ない。


「おお、団長! やるな! ガハハハ!」

「マスターは、お店に戻って結構ですよ?……迷惑をかけたくありませんし」


 ごたごたに巻き込むのも心苦しい。


 出来ればお店に戻って欲しいけど。


「なーに、これでも顔が広いからよ。知り合いの騎士も居るかもだろ?」

「『酒場の人脈なめんなよ!』ですか?……了解しました」


 カナさんとリナさんを家路につかせようと思ったが。


 通り魔に襲撃されるのは危険なので。共に行動してもらっている。


 もちろん、スライム君も一緒だ。






「あ、貴方は!?『お掃除旅団』の団長殿では? 自分の事を覚えておりますか? 盗賊どもを連行した騎士の一人であります、トニーです!」

「……俺の関係者なの!? 意外過ぎるだろうがあ!……通り魔にやられた魔法騎士は、ここに?」


 魔法による治療をする診療所か。


 病院の雰囲気は好きではない。


 あの、なんとも言えない感じ。


 病気で通院してるのだから。好きも嫌いも無いのだけど。


「ど、どうしてその事を!?……自分は、これから一人事を述べますので。……誰も聞いていないな!?……ここの二階、緊急魔法施術室にて治療中であります。かなり危険な状態で、意識も朦朧もうろうとしておる状態。体中を切り刻まれておりまして……見るに堪えない……姿でした」

「こ、声が大きいよ!?……今すぐに案内してくれないか! 俺が治療するからさ! この通り、お願いします!」


 頭を下げつつ、頼み込む。


 一刻も処置しなければ命を落としかねない。


「あ、頭をお上げください!……団長様から、おっしゃられるとは。実は、自分からも彼女を救う手立てを、お頼みしてみようかと思った次第であります! では、急いで来てください!」





「騒がしいぞ!……トニーじゃないか? 後ろの連中は誰だ!」

「し、失礼します!? アカギ団長!? あの『お掃除旅団』団長の方々であります!? か、彼女を救えるとの事で、協力を!?」


 上司の恫喝どうかつじみた質問に。たじろぐサラリーマンのトニー。


 おっと、騎士だったな。


「……どうも、ソージです。アカギの旦那、よろしくです」


 ずいぶん強面こわもてな戦士だな。……警察ドラマの警部役にぴったりだぜ。


「あの『お掃除旅団』の団長様だと? ふははは! こんな、ひょろひょろした奴が!? 冗談はよせよ、トニー。……場の空気が悪いからって、妙な気を回すな。一階を見張っておけばいいんだぞ? そら、帰った、帰った!」

「しかし、アカギ――」


 【スキル発動 殺意のプレッシャー 対象人物に殺意を叩きこむ。強者であるほど、効果あり。体の震え、精神的にダメージを引き起こす場合も】


「な、なん、だとおお!? この俺が、体を震わせている!? す、凄まじい、圧力だぜ!?……オイオイ、マジで団長様かよ」

「で、彼女は?」


 単刀直入にたずねる。


 悪いが、あんたに構ってる時間はない。


「……あ、ああ。そこにある扉の先――」


 アカギの旦那が言い終わる前に、扉に手をかけて開ける。


 そこには、回復魔導士がベッドで仰向けにされた彼女を治癒していた。


 彼女の体全体には……剣によってつけられた傷跡が。


 無傷の場所など無いに等しい。


 これで、よく生存していると思うほどの悲惨な姿。


 はたから見れば、殺人現場で死体を目撃するぐらいの衝撃的現場だ。


「だ、誰ですか? 貴方は?」

「容体は? どこまで処置を?」


 回復魔導士A娘が疑問をぶつけたが。


 ただ者じゃないと察知したのだろうか? 


 話を進めてくれた。


「応急処置で傷をふさぐのが精一杯で。意識も、とぎれとぎれで危険な状態です!」


 【スキル発動 再生医療 あらゆる傷を元通りに。ただし、安静にして過ごさなければ効果が途切れる】


 【スキル発動 鎮痛作用 対象の人物の痛みを抑える】


 【スキル発動 輸血効果 血液を失った分、補給する。徐々に体に馴染ませる】


 【スキル発動 休眠状態 必要最低限の活動にエネルギーを回しつつ、徐々に体力を回復。目が覚める頃には通常活動ができる体力を維持している】


 【スキル発動 悪夢回避 寝ている状態で悪夢を見ない。かわりに、安らげる夢を見る】


「う、嘘でしょ!? 傷が治り始めているの!? いえ、そんなレベルじゃないわ!? さ、再生しているの!? か、顔色が鮮やかに? こ、これでは、眠っているだけの状態じゃないですか!? し、信じられない」

「……これで、とりあえず様子をみよう」

「い、いかれてやがるな!? ほ、誉め言葉だぜ?」

「ソ、ソージ殿! じ、自分は感動しております!」


 ……ここからが問題です。恒例行事じゃないんだけどさあ。


「旦那にもベッドの準備しとけよ! 力を使ったんでぇ! 休ませろや!……俺は、また食糧とかを調達してくるからよお!」

「では、わたくしとカナで看護をいたしますわ!……どうしました、スライムさん?……魔力を分け与える事ができますの?……では、お願いします!」

「わ、わたしは、む、むぎゅーでも、ちょっぴり回復できますか?」

「カナさんを補給するー! あははは! なにこれ!? 回復してるよー!……スライム君? 魔力くれるの? あざーす!……おお、倦怠感が収まって来たー!」


 仲間達の協力で、どうにか倒れる事態は回避できそう。


 ありがたやーありがたやー。合掌であります。

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