第18話 戻ったら出迎えどころか誰もいなかったんだが
外を見ると木でできた大きな柵が見えてきた
あれはエルフ族の村に周りに建てられた防御壁の一つだ
俺はアルネシアのほうに向かい
「ようやくつきましたね、クッションの一つでも作っておけばよかった、お尻が痛くてかないませんよ、アルネシア様?」
彼女はさっきからずっと村のほうを見ている、耳をぴくぴくさせて可愛らしい
その顔から余裕は感じられない
「聞こえないの」
「はい?」
「だから聞こえないの、何も、まるで誰もいないみたいに静かなの」
アルネシアが冗談を言うわけがない、なら何か村で起こったと考えたほうがいいだろう
一応言っておいた方がいいよな
「分かりました、犬耳族の皆さんにはいったんこの周囲に留まってもらいましょう」
俺はゾラとダックスに村の様子がおかしいので族長にこのことを伝え待ってもらうように頼んだ
彼らは意外にも簡単に聞いてくれた
「任せておけ!!」
ゾラは手を胸に当て笑顔でそういった
ダックスは何か思ったのか
「事情は分からないが、本当に大丈夫なのか?」
心配する気持ちはわかる、これが罠かもしれないと思うものは少なからずいるはずだ
「安心してください、犬耳族に迷惑はかけませんから」
「はあそうか、僕は君に大丈夫かといったんだがな」
心配してくれていたのか、顔に出ないからわかりずらいな
「僕の方はある程度は、では行ってきます」
ダックスにそういい俺達は村に中に入る
村の中はいたって普通だった
家の中を確認する、しかし誰もいない
荒らされた様子もなく、本当に村のエルフだけが消えたように見える
「アルネシア様、何が起きたのでしょうか」
俺はさっきから黙っている彼女に聞いた
「わからないわ、人間が攻めてきたにしては、戦闘跡がないのが不自然だわ」
彼女は意外にも冷静な判断で答えてくれた
そうなのだもしも人間族が攻めてきたのなら、もっとこの場は荒らされているはずだ、でも現状エルフ族は誰もいない
なら皆で逃げた? いやそれは考えずらい、アルネシア一人を置いて出ていくわけがない、ならなんだ、魔法か? 転移系の魔法なら可能かもしれない、あるかは知らないがこの世界にならあってもおかしくはない
俺がいろいろと考えているとアルネシアの耳がピンと動き
「待って! 今何か音がした」
といい俺の手を強引にもつ
「こっちよ」
アルネシアにされるがまま俺は連れていかれた
そうとう焦っているのだろう、呼吸が荒い
(誰もいないから焦っているのはわかるが、いややめよう、今はいいか)
アルネシアの手の感触に喜びを感じていたがそれも長く続かなかった
アルネシアの足が止まったと思ったらつながれていた手にとてつもない強さの力が加えられ俺の指は悲鳴を上げた
「ぎゃぁぁあああ痛い、痛い! アルネシア、いったい何を」
目の前に広がった光景に言葉を失ってしまった
一瞬それが何なのかはわからなかった、何かの見間違いかと思った
家の壁に打ち付けられたなにか、それははどこからどう見ても俺が知っている人物でいつも小うるさいのが印象だったエルフ族の長年者の一人アロウ・アルトシアの死体がそこにあった
その目には最後まで何かを見ていたのか開いたままだった
いったい何が起きているんだ
俺は周囲を見るがアロウの死体以外に変わっているところなんてない
しかしこれで大体の予想がつく
アロウは老いてもなお強い、アルネシアだって距離を取られたら負けるぐらいだ
そんな彼が負けるということは相手はかなり強い、それに集団ではなく少数で来ている可能性がある
そうではないと周りの状況の説明がつかない、数人と考えていた方がいいか
人間じゃない可能性も考慮しておくべきだな
目的はまだわからないがこのうちつけられた死体、敵は相当頭がおかしいのだろう
簡単な推理をアルネシアに説明しようと思ったが彼女は黙ったまま立ち尽くしていた
そういえばアロウはアルネシアの弓の師匠だったか、こうなるのも無理はない
しかし今はじっとしている場合ではない
「アルネシア様」
反応はない
「アルネシア様」
反応はない
「アルネシア!!」
俺は思いっきり耳元で叫んだ
「連......」
彼女は今すぐにでも泣きそうな顔でこちらを見てくる
その目にはもうあきらめのようなものが混じっているように見えた
やめろよ、まだあきらめるのは早い
「アルネシア、安心しろ、たぶんまだ生きてる」
「意味が分からない、アロウはもう......」
「アロウは死んでいるが、他のエルフ族は生きてる」
そういった瞬間アルネシアの顔がこちらを向いてどうゆうことっていう顔をしている
「あの時物音がしたって言ったな」
「ええ」
「で見つかったのが彼、おかしいとは思わないか? 死体が音を出せるはずがない」
アロウが打ち付けてあった家にアルネシアを連れて入る、そこにはほかの住居と同じ構造をしており、一見何もないように見える
「実はこうゆうことは考えておいて避難先を作っておいた、何とかうまくいったみたいで安心した」
俺はそういいながら敷いてあった獣の皮で作られたカーペットを取りさる
そこには何の変哲もない床が広がっており、おかしなところは見えない
俺はさらに備え付けられた家具を前に動かすとそこには魔法陣が描かれている壁が現れた
「アルネシア、ここに魔力を込めてくれ」
アルネシアは何も言わず言われた通りに魔法陣に魔力を込める
すると魔法陣が光りだし、装置が作動した
ギィィィと鈍い音が聞こえたと思ったら床に穴が開いた、そこには梯子がかけられており地下へと続く道ができていた
「行くぞ」
俺はアルネシアに言って先に地下に降りる、アルネシアは困惑していたが今は無視だ
地下には明かりが灯っていない、酸素も薄く、居心地は悪い
俺はアルネシアに頼み、ライトの魔法を唱えてもらう
酸素が薄いので光系魔法がいいだろうとの判断だ
地下はそれほど広くなく30メートルといったところだ
俺達は地下の最奥にたどり着いた
「何もないじゃない」
「一応警戒してこうしてるんだ」
俺はポケットからカギを取り出す、それを地面の本当に分かりづらい、鍵穴に入れまわす
それは一見地面に見えるがよく見ると表面だけで、木でできた床扉だ
開けると、さらに梯子がかかっており降りるために合図をする
地下に降りるとそこには簡易的であるが周りは木で補強された場所が現れる
ここには空気穴が設置してあり、空気も薄くはない
ざっという音が聞こえたと思ったら何かがこちらを見ていた
アルネシアが下りてきてこの場にライトの光が届いた
「アルネシア?」
「カイン! それに皆!!」
そこには剣を持ったエルフ族の青年と数人のエルフ族がいた
アルネシアは走ってみんなのもとに駆けていった
「よかった......誰もいないんじゃないかって心配したんだから」
アルネシアの存在に気付いたエルフ族たちは次々と安堵の声を上げた
「ごめんな、アルネシア」
アルネシアは一人の青年エルフに抱き着いていた
ああ、なんという感動的な光景なんだろう
邪魔するわけにはいかないか
俺はアルネシア達をその場に残し地上へと戻った
確かめなければならないことがある
ある場所に向けてその足を動かした
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