第12話 俺の特技?そんなのお座りしかないでしょ

 俺が考えた作戦はこうだ

 1.まずアルネシアと手をつなぎ森デート

 2.デートの途中、人間族に見つかり追われる

 3.逃げている途中たまたま見つけた獣人族の村に助けを求める

 4.彼らも人間族を見たら戦うしかない

 5.しかしピンチに陥る

 6.そこで俺が登場! 黒龍をつかい人間どもを駆逐

 7.きゃーかっこいい結婚してとアルネシアとめでたくゴールイン

 8.獣人族も俺の事を尊敬の目で見てくる

 9.これで解決というわけだ


 この作戦を伝えた瞬間に俺はアルネシアから顔面を殴られた

 全く何が間違っているのか俺にはちっともわからないよパト〇ッシュ

 まあ多少変更点はあるがこの作戦で行こうという結論に至った

 結局俺みたいなのを信用してもらうには窮地を救った方が早い

 一応人間とばれないためにフードをかぶっていく

 ファフには俺が叫んだら来てくれるようになっている

 頼りになるぜ、相棒!!

 ということで作戦が開始された

 俺とアルネシアは作戦通り散歩デートを開始した

 なぜ散歩かって? 俺は彼女の忠実な犬だからだよ


「来ませんね......」


「そうね」


「一つ聞きたいわ、なんで犬耳族なの?」


「なんでとは?」


「仲間に引き入れる件よ、目的があるんでしょ?」


「そうですね、しいて言うなら犬耳っていいじゃないですか」


「は?」


「いや僕たち人間からすると頭の上に動物の耳が生えていると何て言うか興奮するんですよね」

 

 彼女は引き気味にこちらを見ている


「はあ、あんたの事少しは分かってきたわ!」


 頭を踏まれる

 彼女に踏まれたまま状況を整理する

 現在作戦ナンバー2もまま一向に進まない

 現在俺たちは人間の村に近くにいた

 近くといっても森の中だし距離も何キロも離れている

 しかしいつもこの辺にいるという見回りらしき人間が今日はいないらしい

 これでは作戦が進まない

 いっそのこと人間の村をファフに攻撃してもらってここに来させるか?

 うーん決していい考えではない

 あいつのことだ皆殺しだろう

 それは避けておくべきだ

 そういえば獣人族の村はここから少し離れた場所にあるらしいな

 すこし様子を見てくるか?

 うんいいかもしれない、俺は犬耳族は情報を聞くことでしか情報を得られていない

 よしここは一つご主人様に頼んでみますか


「アルネシア様、獣人、いえ犬耳族でしたか、彼らの村を見たいのですがいいですか?」


「いいけど犬耳族は鼻がいいからあまり近づけないわよ? それでも行きたいの?」


「構いません」


 俺は作戦ナンバー2を保留にし先に犬耳族の住む村へと案内してもらう

 犬耳族の村は何というかこじんまりとしていた

 住居はエルフ族と違い小さく作られており非常に入りずらそうだなと思う。しかし遠目からでしか見えないのでそう思うのだろう

 しかしやっぱり耳が犬だな、あ、尻尾まで生えている


「あまり前に出ないで」


 いけないいけないつい気になって足が出てしまったようだ

 感謝するよ、ご苦労なんて言ったら殴られそうなのでやめておく


「なんというか感動するものがあるな」


 それもそうだあの耳きっとモフモフして撫でたら気持ちいいんだろうなと妄想が膨らんでしまう

 きっと迎えに行くからな待っていろよ


「戻りましょうか」


 俺の声にアルネシアは頷く

 意外と素直なんだよなぁ

 まあ俺が裏切るとは思わないだろうしな

 いや裏切ったりしないよ? ハハハ......

 俺たちが元の場所に戻ろうとしたとき犬耳族の村から聞き覚えのある音が聞こえてきた

 ドゴォォォン

 その音を聞いて俺はアルネシアに確認のために聞いた


「あれは人間族によるものでしょうか?」


「そうね、あいつらがいつもやる方法よ」


 彼女は悔しそうに歯噛みしていた

 突然の出来事に俺もアルネシアも困惑していた


(ああ! わかってたさ俺の作戦がうまくいくわけない)


 しかしこうなったら都合がいい

 順序は違うが彼らを救えばきっといい関係になれるはずだ(多分)


「アルネシア様、彼らを助けようと思いますがいいですか?」


「そ、そうねそうして」


 なんか歯切り悪いなぁ

 まあ気にすることでもないか


「アルネシア様は確か魔法が使えましたよね」


「ええ」


 よしそれならしばらく時間は稼げるはずだ

 俺たちは犬耳族の村へと向かった

 彼らを人間族の手から助けるために

 


 村の中にあっさり入り込めた

 彼らもそれほど焦っているのだろう

 運がいい、村の中は正直火の気配が立ちこんでおり臭い

 よく見ると彼らの住居はどことなく犬小屋を思い出す


(うん、いいね!)


 飼っている感じがしていい気分だ

 おっといけないアルネシアがにらんでいる

 僕は君の事も愛しているっていうのに

 ウインクでもしてやろうかと考えたが

 うんよしておこう、きっと殺される

 俺は今彼らを助けるためにここにいるのだ

 妄想はこれが終わってからでも遅くはない


「アルネシア様、人間たちはどこにいますか?」


「あそこね、30、いや40人はいるわね」


 彼女たちエルフが耳がいい

 周りの音を聞けば周囲の状況が読める

 俺はアルネシアに案内され人間族のいる場所へと向かった

 

 彼女の言った通り人間族はいた

 だがこの前エルフの村を襲ったやつらと服装が違った

 皮の鎧を身に着けた剣士風の男、杖を持ちローブに被った魔法使いみたいなやつ、白い服に身を包んだ神官のような女どこか冒険者を思わせるやつらが20人はいると思う

 彼らと戦っている犬耳族の数はこちらも20人といったところだろうかしかし人間族のほうが押している

 彼らは経験の差からか戦い方がうまい気がする

 魔法使いが遠距離から魔法を唱え近距離は戦士がひきつける

 怪我をしたら後ろに下がり神官に回復魔法をかけてもらう

 いい連携だ

 一方獣人は近距離でしか戦えないのか魔法を使う素振りは見えない

 これではすぐに力尽きるのは見えている

 すぐにでも行動を起こすべきだな


「アルネシア様、魔法でこちらに注目を引き付けてください」


 彼女は頷く

 ここから本番だ、正直うまくいくかはわからない

 しかしここでつまずくわけにはいかないのだ


「火の神よ、我力を欲す、魔力を糧に原初の炎を」


 彼女が詠唱をする

 魔法を見るのは二度目だなと思いながら見ていた

 できたのは大きな火の玉、ファイアボールだ

 この魔法は一見簡単そうに見えるが、いやこの話はあとにしよう


「行くわ」


「ぶっ放してください!」


 アルネシアは手を振りかぶり戦闘の中心付近にファイアボールぼぶちかました

 地面は燃えるようにえぐられ煙がでている


(これは......絶対に敵にまわすべきじゃないな)


 再び彼女への忠誠を誓う

 彼らは何が起きたのかとみんなこちらを見ていた

 俺は開始だと大きく息を吸い大声で叫ぶ


「俺は犬耳族に加勢に来た! 今から証拠としてそこにいる人間どもを皆殺しにする!」


 俺は胸に手を当て天に向かい叫ぶ


「ファフニール! 我が問いに答え顕現せよ!」


 さて呼んだし大丈夫だろう

 俺はファフニールを待つ......

 待つ......


(来ないんだけど......)


 沈黙の時間が流れる

 彼らも何が起きたのかわからないのだろう

 ただ茫然としばらく俺の事を見ていた

 だが何も起きなかったので無視されすぐに戦闘が再開された


(うそでしょ......あいつ来ないじゃん、なにしてますのん)


 ファフが来ないことに危機感を覚えていた

 俺たちの目の前に誰かが立っていた

 斧を持ち屈強な筋肉を持った犬耳族の戦士だ


「エルフ族とお前は何者だ」


 睨まれている、めちゃ睨まれている

 やばい、それに恥ずかしい、どうしよう

 顔を両手で隠して今すぐにでもここを逃げ出したい

 しかし後ろにはアルネシアがいる、そんな姿見せられない

 無理だな


「俺たちはお前たち犬耳族が人間族に襲われていると聞き助けに来た」

 少々声が裏返ってしまった


「へぇ、人間が何しに来た?」


 ばれてますやん

 フードなんて意味ないじゃん! 誰だよ何とかなるって言ったの、俺か......


「俺はお前たちに危害を加えるつもりはない! 信じてくれ」


「人間族の言うことを信じれるわけがないだろ」


 がんと斧で音を鳴らす

 その顔を見て俺はちびりそうになった

 実際少しちびった


(怖い怖い怖い! 逃げたい、助けて〇〇〇もん!)


「大丈夫よ、彼は奴隷魔法によって私に逆らえない、証拠も、お座り」


「ワン」


 くそう、なんで俺がこんなことを......

 だがこれで少しは危険がないと証明されたはず


「なるほどな、わかった、信じよう、では助けてくれるとはどうゆうことだ?」


 斧をおろしとりあえず話は聞いてくれるみたいだ


「今、私たちはこいつを使って人間族から奪われた土地を取り返そうとと考えているのよ、でも数が足りないの、だから今日はあなた達に協力を頼みに来たってわけ」


 アルネシアは俺の考えたことをすらすらと答えてくれる

 一方俺はお座りしたまま黙っている

 黙っているほうが話が進むと考えたからだ


「こいつが何の役に立つんだ?」


 おいおいなめてもらちゃこまりますぜぇなんたって俺は「彼は黒龍を使役しているもの」


「なっ!!! それは本当の事か!?」


 俺は肩を揺らされる

 脳が揺れる~


「ええ、でも黒龍はすぐに来ないみたいね、少し耐えなければならないけど大丈夫?」


「ああ、何とかする元からそのつもりだからな」


 犬耳族の男はアルネシアだけに笑顔を向けた

 なんだよ、さみしいじゃないか

 アルネシアのおかげで何とか信じてもらえたみたいだ

 だがファフニールのやつ何してんだよ

 まああいつのことだすぐに来るだろう

 

 

 


 

 

 

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