第5話
「――ッ!」
「ゲーム決まった?」
「おう! とっておきのゲームがあったわ!」
その時、天から
単にピンと名案が
そんな俺の反応に気づいた小豆が嬉しそうに声をかけてきたから、自信満々に肯定してやった。
「じゃあ、私が勝ったらお兄ちゃんを好きにして良いよね~♪」
「いや、俺が勝ったらどうすんだよ? 出て行くだけじゃ成立せんだろ」
一応、お互いに賭けるものを提示する。これも忠の盟約に定められているのだ。
三つ目 ゲームには、相互が対等と帯刀と鯛等と判断したものを賭けて行われる。刀も鯛も関係ないよね?
四つ目 『三』に反しない限り、ゲーム内容、賭けるものは一切合財俺のものであると
そもそも小豆と俺の賭けたものじゃ対等じゃないよね? ないよね??
賭けるものが対等ではないと判断していた俺は、困惑ぎみに小豆に反論をするのだった。
「じゃあ、お兄ちゃんが勝ったら私を好きにして良いよ~♪」
「……だから、したくないから出て行けと言っているんですけどね? ――と言うか、パジャマのボタン外して、胸元をチラチラさせんな!」
なのに、何を勘違いしたのか胸元のボタンを外して布地をピラピラと揺らしながら、恥ずかしそうに口にする妹。恥ずかしいならするなっての。
つい胸元を見てしまっていた視線を、後ろ髪を引かれる想いで小豆の顔へと戻した俺は反論する。
「あ~、お兄ちゃんのえっちぃ~♪」
「あのな……」
その視線と俺の言った「チラチラ」に反応するように、嬉しそうに言葉を投げる小豆さん。
見ちゃっていた俺が悪いんだけどさ。「エッチ」って言いながら、更に恥ずかしそうに布地を広げるのは矛盾していると思います。
俺は妹の顔から下を見ないようにしながら、呆れ顔を返しておいたのだった。
「お兄ちゃんが勝てば問題ないじゃ……んぅ~、ぶっ?」
「……そらそうだが……。――ッ!」
見つめられて勘違いしたのか。何の?
目を閉じて唇を尖らせて近づいてくる妹の小豆。とりあえず手の平で唇の猛攻を阻止してみた。
だけど突然小豆に手の平を舐められて手をどけてしまう。
「……勝つ自信ないんでしょ~?」
すると、したり顔の小豆はこんな生意気なことを言ってきたのだ。
「は? バカ言え、俺が問題出すのに負ける訳ねぇだろが! おーおー、いいぞ、その賭けでやったるわ!」
「じゃあ、決まりだね~」
そんな挑発的な笑みと言葉に俺は意気揚々と賭けに乗ることを宣言していた。
あ、あれ? 賭けが成立しているようなのですが? もしかしなくても俺ってバカ?
ま、まぁ、俺が勝てば問題な――いや、あるだろぉが! 好きにしろって何すんだ?
あんなことや、こんなことか? って、静まれ、俺。
あっ、好きにして良いなら、出て行ってもらうことも可能か? なら問題ないな?
「好きにしていい」の言葉に我を忘れて暴走していた俺は、何とか理性を保って小豆を見つめる。
そんな俺へ向かい、未だに不敵な笑みを頬を染めながら浮かべる小豆さん。もうそのオプションは気にしない。
「それじゃあ……」
俺達は姿勢を正して対峙し直す。ゲームの妨げになりそうなので、小豆には胸元のボタンを留めてもらっておいた。
そしてお互いの手の平を突き出して――
「「――
声を合わせて、そう告げたのだった――。
◆
そんな風に同じタイミングで宣言をした俺と小豆。アニメの世界に基づいて正式に宣言をするのだった。
「……それで、ゲーム内容は~?」
手を下ろした小豆は唐突に俺へゲーム内容を訊ねてきた。まだ伝えていないのだから当然なのだが。
「……ふっふっふ……妹よ、そこまでして知りたいか?」
だから、偉そうにもったいつけてみた俺。
「――いや、別に知りたくない! ……」
なのにバッサリと切り捨てられてしまった。そして両手を広げて近づいてくる妹。うん、小豆は最初からゲームが目的じゃないからね。知らなくても問題ないんだよね。
「……し、知ってくださいよぉ?」
「……ふ~ん、そんなに知って……ほ・し・い・ん・だぁ?」
そんな小豆に後ずさりしながら懇願する俺。そんな俺に、ドSな表情で俺の喉から顎にかけて人差し指でなぞりながら聞いてくる小豆さん。
コイツに『絹ハサ』を読ませるんじゃなかった。
とても艶やかで色っぽさを感じる大人の女性の雰囲気を醸し出す妹。風呂上りの薄手のパジャマ姿なのも相まって、普段の子供っぽさが感じられない。お、おんなってこわいね。
と言うより、これ以上進むとR指定かかっちまう。
「ぜ、是非に!」
「そう? ……じゃあ、聞いてあげるっ♪」
だから、冷や汗まじりで答えた俺。そんな俺の言葉を聞いた小豆さんはジッと俺を見ている。
なんとか聞いてもらおうと首をコクコクと縦に振っていた俺を見て、パッと離れたかと思うと普段の小豆に戻って満面の笑みで言葉を紡ぐのだった。
つまり、逆に言わせてもらうハメに陥っていたのだ。
先制攻撃は『かのは』シリーズ最新作。
『罵倒笑女キキタルかのは ビビっと!』の主人公である、かのはちゃんの娘の『坂町ビビオ』ちゃん。
作品内で彼女は総合格闘技をしているのだが、そんな彼女ばりの精密なカウンターをくらって、少しゲージを削られてしまいましたよ。
って、ゴング前なのに何故にダメージをもらってんだろう。
まぁ、ちょっとやそっとの俺の揺さぶりでは効かないってことなんですかね。
『ていおん!』のあずにゃん……の中の人のスイカも、多少の地震くらいでは揺れないそうですからね。
仕方ないのだろう。
「……それで、ゲーム内容は~?」
先ほどの攻防など、重傷を負った『さすおに』の勝也お兄様が自己修復術式を使うが如く、何もなかったかのように言葉を繰り返す小豆さん。
俺は改めてゲーム内容を伝えようとしていた。
「小豆よ……このお兄ちゃんが、なぜ平凡級でありながら、
「――いいの?」
「あっ、ごめん、ウソ。誰にも思い知らせなくていいから……」
俺は往年の名作。『超猿人達殻マックスロス』の艦長の名台詞っぽく言ってみた。
善哉って『ぜんざい』の他にも『よきかな』とか『よいかな』とも読めるらしい。
そうしたら、嬉々とした表情で訊ねられたんでお断りしておいた。
だって、小豆さん。
それに、ゴシップ記事の方がまだ真実に思えてしまうくらいの
「むぅ~。……それで、ゲーム内容は~?」
そして少し不満そうな表情で壊れたテープレコーダーのように数秒前の台詞を当然のように言ってくる妹。
うーん。なんで同じ台詞しか言わないんだろう。
さっきの辛さで回路がおかしくなったのかと思ったけど、これが通常運転だったことに気づく。別に言語障害とかではないようだ。元から俺に対しては思考障害があるのかも知れないが。
まぁ、さっさと進めるとするかな。
そろそろ寝ないと聖誕祭に遅れを取ってしまうではないか!
まぁ、これだけ
と言うよりも、俺がオタオタしているから早く片付けたい。
そんな危機的状況から解放される為に、俺はゲーム内容を伝えることにしたのだった。
「ゲーム内容はだな?」
「うん」
「……お兄ちゃんプレゼンツ、お兄ちゃんしか知らないお兄ちゃんマニアッククイズ。略して……それは僕たちのミラコォー!」
「わーい、おもしろそ~♪」
渾身のダブルボケ。略していない上にタイトルを流暢な英語に変えると言う高等なボケ。
そんな攻撃をあっさりと某罪な団長ばりにフルカウンターしてきた小豆さん。
「……いや、とりあえずボケにはツッコミ入れてもらわないと、お兄ちゃん赤っ恥なんですけど……」
「お兄ちゃんはまだ若いし、ボケてないから大丈夫!」
自分のボケが恥ずかしくてツッコミをお願いした俺。なのに、こんなボケが俺を襲うのだった。
うぐぐ……。ボケをボケで返されてしまった。またもや、俺にダメージが……。
せっかく、ゲームのOPだから
完全に
しかし、ゲーム自体でなら俺が負けることなどないから、ハンディキャップだと思って受け取っておこう。
何はともあれ、さっそくゲーム開始だな。
俺はそんな前哨戦で受けたダメージを残したまま、ゲームを開始するべく、妹にクイズを出題するのだった。
◇5◇
「第一問 お兄ちゃんの好きな食べ物は――」
「ほとりちゃん!」
俺の問題が言い切る前に答えていた小豆。俺は内心ニヤッとほくそ笑んでいた。
そう、この問題は引っかけなのだ。だから俺は続きを伝える。
「……からあげですが! お兄ちゃんの好きな『リブレイブ!』のキャラ……は?」
「……」
「……せ、正解」
「一ポイント~♪」
俺が質問を言い切ろうとしていると、目の前には勝ち誇った小豆の顔が映っている。
俺は一瞬、コイツの言った答えを思い出して正解だと伝える。
ま、まぁ、一問目だしな? 軽いフリッカージャブってヤツさ。
小豆さんは笑顔を浮かべて、自分の膝の上に自分が持ってきていたほとりちゃんを乗せていた。よくあるクイズ番組のお約束のアレだろう。
そんな、ほとり参謀が加わった小豆軍に対峙して、善哉軍は二問目を突出した。
「第二問 お兄ちゃんが好きな色は――」
「ほとりちゃん!」
またもや言い切る前に答えを言い切る小豆さん。
「……青ですが! 『リブレイブ!』で白のイメージカラーの子と言え……ば?」
「……」
「……正解」
「二ポイント~♪」
同じように正解されてしまっていた。
イメージカラーと言うのはアイドルをやっている彼女達のライブなどのメンバーカラーのことである。
あ、あれ、あっさりと、ニポイント取られているんですが。こんな状況は望ちゃんのカードのお告げでも言ってませんよ。
あっ、リブカにはそんなお告げは付属されていなかった。もしや課金すれば付属されるのかな。
それは興味深いオプションではあるが、無課金勢だから何も役に立たんな。
俺は望ちゃんではないので、カードのお告げなど聞ける訳がない。
そもそも、俺の持っているのは『リブレイブ!』関連商品に付属される『リブレイブ! カード』であるリブカだけ。そのカードに記載されているポイントを貯めると何かに交換できる仕組みなのだ。
もしかしたら俺が知らないだけで、オプションで課金すればカードのお告げが聞けるのかも知れないと思っていた。
ただ、俺は無課金勢なので仮にあっても意味がないのだと感じていたのだった。
そんなことを考えている間に小豆さんの陣営には、ほとりちゃんの双子の姉。君の名は――
『ほとりちゃん』が加わっていた。
別に入れ替っていないし、単に俺の部屋のほとりちゃんなんだけどさ。
――って、青●さーん。愉快な誘拐事件が起きましたよー!
俺は目の前で起きた誘拐事件に対して、脳内で、某湾岸にある警察署のお巡りさんに助けを求めていた。
『事件は会議室で起きてるんじゃない……お前の脳内で起きてんだっ!』
すると俺の脳内に、こんな名台詞が聞こえて……キターーーーーーー!
いや、聞こえてきたのだった。
な、なるほど。
――って、いやいやいや、現実の俺の目の前で起きてますって! ほら、そこに……って、どっちがウチのほとりちゃんだ? 一卵性すぎて見分けがつかん。
確かに名台詞は俺の脳内で繰り広げられているのだが、事件は目の前で起きているんで、現場に立ち会ってもらおうと小豆の方を見たのだが。
あまりに似すぎている二人に、俺のほとりちゃんがどっちなのかを確認できなくて困惑していたのだった。
ま、まぁ、奪還すれば問題ないか。
とりあえず、俺は心を落ち着かせて次の一手を打ち出すことにした。
と言うより、完全に俺の思考を読まれているのかもな。だったら、誘導作戦で――
「第三問 お兄ちゃんが好きな『リブレイブ!』のキャラは――」
「ほとりちゃん!」
勝ったな、ガハハ!
「……ほとりちゃんですが! 『甘辛と稲穂』で、みはやんの演じたキャラの名前……は?」
「……」
「……正解」
「三ポイント~♪」
あ、あれあれ? 誘導ミスですか?
誘導するつもりが「YOU……どうしたの?」と心配されるレベルでミスったらしい。
あっさりと三ポイントを取られてしまったのだった。
アニメ『甘辛と稲穂』と言う作品で、俺の大好きな声優さんの一人である『みはやん』と言う愛称で親しまれている人が演じているキャラも『ほとり』と言う名前なのだ。
まぁ、冷静に考えれば『ほとりちゃん』と言うのがわかっているのに、あえて正解を与えた感じではある。サービスサービスてんこ盛りである。
する余裕なんて、お兄ちゃんにはないんですけどね。
そんな訳で、ほとりちゃんツインズ+世里ちゃんと言う小豆陣営ができあがっていた。
しかし、今のところ小豆さんは「ほとりちゃん!」としか言ってませんね?
私、気になります! いや、気にならなくても気づきますが。
アレだな。俺のことだから「ほとりちゃん」へと通じる問題しか出さないと思ってんだろうな。
たぶん『善哉の全ての道はほとりちゃんに通じる』と思っているのですね。
……ある意味、正解。だが妹よ、手の内さえわかれば対策など簡単なのだよ。小豆、やぶれたり!
「第四問 お兄ちゃんが好きなアニメは――」
「うちっちー!」
「……『リブレイブ!』ですが! その続編である『さぁ社員!!』で一番好きなキャラ……は?」
「……」
「……正解」
「わ~い。マッチポイント~♪」
四問目にして、急に答えを変えてきた小豆に、まったく対応しきれなくて俺が敗れましたとさ。
『うちっちー』と言うのは『さぁ社員!!』に登場する女の子……達が住んでいる近所の某実在する水族館のマスコットキャラである。
と言っても、彼が登場したのは声優さん達のCD。そのミュージッククリップの中だけなのだ。
あと、作品中に彼の生首……まぁ、着ぐるみなんで顔だけ登場していたのだった。
どどどどどどどうしよー! マッチポイントですよ、マッチポイント……。
って、特に何ポイント制とか決めていないんですけどね。強引に答えだけでなくルールも変えてきましたね。
でも、もう寝たいし、奥の手を使って大逆転するんで次で最後の勝負にしましょう。
こうして俺は、みこちゃんが加わった小豆陣営に最終決戦を挑むのだった。
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