手を組む影達

有原ハリアー

握手する巨人達

 およそこの世のものとは思えぬ場所で、一機の黒い巨人が佇んでいた。

 いや、巨人というよりは、“巨大人型兵器”と称するべきものであった。


 その胸の中に、二人の男女がいた。

「そろそろ約束の時間だね、姫様」

 端正な顔と強靭な肉体、それに特徴的な狐の耳と尻尾を備えた男が、腕時計をチラリと見る。

「そうですわね、騎士様。あら、噂をすれば……」

 豊かな銀髪をたなびかせ、見る者を魅了する肉体を備えた女性が、遠方より飛来する影を見る。


 それは、やはり巨大な影であった。


 白い影はゆっくりと黒い巨人の前に降り立つと、スッと右手を差し出した。

「ふふ、待ってたよ」

「よろしくお願いいたしますわ、皆様」

 黒い巨人の胸部に宿る二人は、拡声機能を起動させて白い巨人に話しかけた。


     *


 遠方より飛来せし白き巨人は、黒い巨人よりもやや低い全高を有していた。

 やはり胸の中に、二人、いや三人が座っていた。

「おっ、いたいた」

「再び、共に戦うのね」

「いいねぇ、こういうの大好きだよ!」

 内訳としては男が一人、女が二人である。

 男は黒を基調に銀のラインを引いた服を纏い、肌の白い女は蒼き髪と白きドレスを纏う。

 そして浅黒く焼けた女は、やや露出の高い服装で楽しそうにはしゃいでいた。

「さて、どうにか間に合ったな」

 三人の中で最も前に立つ男は、白き巨人を黒い巨人の前に着ける。

 そして黒き巨人からの言葉を受け取った白き巨人は、返礼として言葉を発した。

「待たせたな! また頼むぞ、お前ら!」

「再び、わたくし達の王国とあなた方の帝国とが、共闘するのですね」

「オレも見守らせてもらうよ! みんなの戦いぶりを、ね!」

 やはり拡声機能を起動して、三人は眼前の黒き巨人に話しかける。

 そして、白き巨人にスッと右手を差し出させた。


     *


 白き巨人から差し出された手を前に、黒き巨人は躊躇なく右手を差し出し返す。


 そして、ガシッと固い握手を交わした。


 それぞれの巨人のバイザーが光り輝き、お互いの気迫を確かめ合ったのであった。




「それじゃあ、僕達は!」

「アルマ帝国の代表として!」

「加えて、俺達は!」

「ヴァレンティア王国の代表として!」

「そしてこのオレも、みんなを見守る者として!」

 五人がそれぞれ意気込み、声を張り上げる。

 その直後、誰が示し合わせた訳でもなく――


「「今ここに、我らが剣を振るう事を誓わん!」」


 一斉に、宣誓を行うのであった。




 かくして、ここに騎士達と姫達と神様は集ったのであった。

 2つの鋼の巨人と共に。

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