自由勝手考察。

黎夜

夜廻 - 感想考察

 -初めに


夜廻は2015年10月29日に発売されたホラーゲーム。その考察を何故今やるのか?

それは私が今頃その存在、その内容を知ったからに他ならない。それ以外に理由はない。

ノベライズ化もされ、続編もあり、考察などは多くの方々が公開されている。何故今頃になってやるのか?


私がやりたいからだ!! 以上!!


そんなわけで夜廻考察、やっていきまーす。なお、考察はゲーム上の表現とウィキペディアに載っている内容を準拠に行うのでかなり上っ面を撫でる程度にしかできないと思います……ご了解ください。



 -交通事故。故意か?過失か?


物語の導入、操作チュートリアルに従っていると、いきなり愛犬ポロがトラックに轢かれてしまうというショッキングな出来事が起こる。

時刻は「宵の口」、日が暮れて間もない、薄暗い時間帯である。

おそらく片側一車線の峠道で、左方は壁、右方は崖となっている。狭い道と言えるだろう。

主人公の少女は壁上から道端に石を拾い、それを放り投げる。するとポロがその石に釣られて道路へと飛び出し、直後にトラックが駆け抜けていく。

このとき、トラックはクラクションを鳴らすこともなく、減速などもしないまま走り去ってしまう。峠道をかなり速いスピードで走り抜けていることになり、乗っている人間の正気度をまず疑ってしまうところだ。

また、「少女が小石を拾わなければ」、「少女が小石を投げなければ」、ポロは道路に飛び出さずに済んだと、結果論から推量することもできる。


この出来事の直後は、少女はまだ事態をよく呑み込めておらず、「ポロに何かが起きた」ということしか分かっていない様子だ。

姿の見えなくなったポロを探すが、道路に散った血痕は、事故の被害者が崖下へ転落したことを示している。

少女の手には、首輪から先が千切れた手綱だけが残された。



 -お姉ちゃんの消失、孤独となる少女


事故の衝撃から立ち直れないまま家に帰ると、少女のお姉ちゃんが出迎えてくれる。

お姉ちゃんはポロが一緒でないことに疑問を抱き、「ポロが逃げちゃったの?」と少女に問いかけるが、少女は事故のことを上手く伝えることができなかった。

お姉ちゃんは少女を一人家に残して、いなくなってしまったポロを探しに夜の街へと行ってしまう。


少女はしばらく家でお姉ちゃんの帰りを待ったが、一向に帰ってくる気配がない。

心配になった少女もまた、お姉ちゃんとポロを探して夜の街へ再び出かけていく。

峠道へと続く空き地で、お姉ちゃんを見つけるも、どうも様子がおかしい。

お姉ちゃんは少女を草むらに隠し、「絶対に動かないで」と言いつけ、ひとりでと対峙し、―――消えてしまうのだった。


ひとりとなった少女は、お姉ちゃんが落としていったと思われる懐中電灯を手に、家に帰ることに。

その道すがら、少女はついに「お化け」を見ることとなり、以後はそのお化けたちに狙われながら、いなくなってしまったお姉ちゃんを探して夜の街を彷徨うこととなる。



 -少女を狙う「お化け」たち


夜の街には、多数のお化けたちが徘徊しており、それらは少女を見つけると執拗に追い掛けてきては惨殺してしまう。

お化けたちが何故少女を狙うのか、その目的は不明であり、解決することも出来ない。


お化けたちの多くは、自殺や事故死などをした人の霊であると思われ、それらは黒い靄のような身体で、少女を視界に収めるや、ゆっくりと、或いは素早く距離を詰めてくる。

また、大きな口と二つの目、毛むくじゃらの巨体に無数の足を持つ「道ふさぎ」や、巨大な一つ目といった異形のものも、少女を狙って現れる。



 -「よまわりさん」と呼ばれるもの


そんなお化けたちの中でも特に異質なのが、「よまわりさん」と呼ばれている存在。

街で見られる噂によれば、よまわりさんは夜な夜な街を歩き回り、「眠っていない悪い子ども」を袋に入れて攫っていくのだとか。

劇中でも少女を攫いに現れるのだが、その行き先は町外れの古い工場で、少女はコンテナに閉じ込められていた。

コンテナを抜け出し、工場から出ようとすると、よまわりさんは凶暴化し、少女を執拗に追い回し始める。


それでも少女が逃げ続けていると、よまわりさんは終には工場の煙突から落下し、鋭利に欠けた廃施設に串刺しになってしまう。

これで脅威は去ったかと思いきや、なんとよまわりさんはその後少女の自宅の中にまで現れるのだ。

少女はよまわりさんを怖れて逃げ出すのだが、このとき何故かよまわりさんは少女を追うことなく、古びたメモを残して立ち去ってしまう。


どうやらよまわりさんには姿があるようで、袋を担いだ白い姿では危害を加えるつもりはない様子。夜中に起きている子どもを連れ去り街から隔離するのは、から子ども達を守っているつもりなのかも?

よまわりさんが置いていったメモには、「連れ去られた人々はトンネルの向こうへと連れて行かれる」と書かれており、これはよまわりさんの行動とは矛盾しているため、よまわりさんのことを指して書かれているものではないと考えられる。


何故工場を抜け出そうとすると姿となって襲い掛かってくるのか。

よまわりさん自身は、元々は害のない土地神のような存在だったのだと思われ、そこにいつからか現れるようになった〈トンネルの向こう側のもの〉から、町の住人たちを守るために『神隠し』を行っていたのだと推測する。

よまわりさんが根城としている工場地帯も、元は鎮守の森か何かで、人間たちによる土地開発によって神域を穢されたよまわりさんが、異形と化すのに十分な環境破壊が行われたのだと思われる。

やがてそれは町全体を覆う瘴気となり、現在の「ゴーストタウン」になっていったのだと考えられる。



 -商店街を守る「おばけむかで」


よまわりさんと同じように、〈トンネルの向こう側のもの〉から街を守るために動いていた異形がもうひとつある。それが商店街の「おばけむかで」である。

〈トンネルの向こう側のもの〉の手先によって、商店街に張られていた「盛塩の結界」が破られると、おばけむかでは公衆電話を通じて少女にアクセスし、清め塩を託して元に戻すように要求してきた(と少女は感じ取っている)。


少女の住む町にはかつて鉄鋼工場が栄えており、おそらくは炭鉱や鉄鉱などもあったと考えられる。

むかでを神獣として祀る神社は、そういった鉱山の町にはよくあるもののようで、このおばけむかでの住む神社も、そういった謂れのあるもののひとつだったのだろう。

現在では鉱山は閉鎖となったのか、工場も稼動しておらず、「おばけむかで」も鎮守としての力を商店街に残すだけとなったのかもしれない。



 -〈トンネルの向こう側のもの〉


峠の先にあるトンネルの中は濃い霧で遮られており、それを抜けると、曲がりくねった長い参道の先に古くて大きな神社がある。

参道の長さから、山の中腹に設えられた「山の神」を奉り鎮めるためのものと考えられ、また長らくの間放置されていたことが窺える。

これまでの推測を纏めると、どうやら鉄鉱山であったのだろう。

ある日人間たちがトンネルを繋げてしまい、山から鉱石をどんどん持ち出すようになった。

怒った山の神は鉱山師たちを害し、山や工場でいくつもの不吉な出来事が起こったために閉山となり、工場も閉鎖されていつしかその存在を蔑ろにされていったのではないか。


このとき、本来であればトンネルそのものも封鎖するべきだったが、どうやらそれを行わなかったがために、「山の神」の怒りがずっと街に降りてきていたのだろう。

工場が閉鎖となったあとも、街では不審な事故や事件、自殺や行方不明などが後を絶たず、街からは活気が失われ、人々もどんどん減っていったのではないかと思われる。



 -左目を失う少女と、少女を救うポロ


物語のエンディング、お姉ちゃんを山の神の元から救い出した少女だったが、トンネルを出たところで「山の神」に左目を潰されてしまう。

これは「お姉ちゃんを贄から救った代償」や、「今一時の猶予を与えられたことによる負傷」など、いくつかの可能性が挙げられる。


このとき、少女は生死の境をさ迷い、あのトンネルの入り口まで来ていた。

そこで少女を呼び止めたのが、愛犬のポロであった。

ポロは、死後もなお少女の命を救い、その忠義を枉げることはなかったのだ。

あのトンネルの前で、少女はポロと本当に最後のお別れをして、少女は自宅のほうへ、そしてポロはトンネルの向こうへと、それぞれの道を進んだ。


ポロの尽力が山の神を鎮めたのか、少女の純粋さが山の神へ伝わったのか、その真偽も定かではないが、ともかく、少女は無事にお姉ちゃんを救い出すことが出来、また自らも命を永らえることができたのである。



 -お姉ちゃんと「よまわりさん」


少女がお姉ちゃんを探して見つけた空き地で、お姉ちゃんはひとりで「よまわりさん」と対峙している。

そもそも何故、お姉ちゃんはあの空き地にいたのだろうか? そして、「よまわりさん」に攫われたのならば、少女と同じように工場で見つかるはずなのに、「山の神」の手に渡っていたのは何故なのか?


お姉ちゃんが空き地にいた理由としては、「ポロとよく行く場所だから」というのが考えられる。

お姉ちゃんはいなくなったポロを探しており、ポロがいそうな場所を探していたはずなので、いつもの散歩道で通る空き地にいたのは不自然ではない。


「よまわりさん」の保護下から「山の神」へと移っていたのは、ひとえに「山の神の力がよまわりさんを上回っていたから」だと考えられる。

よまわりさんは古き良き神で、元々の力も弱く、山の神の怒りに当てられて凶暴化してしまうところまできていた。

そのために、保護した対象を頑丈なコンテナの中へと封じ込め、自らの力からも、山の神の力からも遠ざけていたのだと思われるのだ。


お姉ちゃんの口振りから察するに、お姉ちゃんは「よまわりさん」や「山の神」の存在について、ある程度のことは知っていたものと思われるため、ひょっとしたらお姉ちゃんは「自らよまわりさんから逃れ、敢えて山の神の元へ向かった」のかもしれない。

それはであり、「よまわりさん」をだったのだろう。

当初は「よまわりさんさえやり過ごせれば何とかなる」という考えだったのだろうが、少女が自分を探しに来たことで事態が動いてしまったのだと推測する。


よまわりさんには最早「山の神」に対抗するだけの力は残されていなかったと考えられ、お姉ちゃんが山の神の元へ向かったと知ると、一目散に少女の元を訪れて掻っ攫い、コンテナへと閉じ込めた。

何よりも「少女の身を守るため」であり、その後に痛手を負いながらも少女の元に「お姉ちゃんに繋がるヒント」を残していることや、トンネルの中で「山の神の手のもの」と立会い、少女から気を逸らしていることからも、「少女の命を守ること」に懸命だったことが窺える。


エンディングの後も、よまわりさんは少女らを見守り続け、また危険を冒そうものならばそれを攫ってでも守ろうとする。

それは「よまわりさん」とお姉ちゃんとの縁が深いものだからなのか、「よまわりさん」が子どもを守る存在だからなのかもしれない。

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