虚無

橘 雨月

第1話 たとえるのならば、水。

生ぬるい水の中に、頭の先から、どんどんと落ちていく。

だんだんと、まわりの色が暗くなる。

水底まで、あとどれぐらいあるのだろう。


いつでも私は『なにか』を探していたように思う。

『あの人たち』から認められる『なにか』


私の思う『なにか』と

『あの人たち』の思う『なにか』は

いつもどこか歯車がズレていたようで。


私の思う『なにか』は

『あの人たち』には、くだらない事で

『あの人たち』の思う『なにか』は

私にとっては、取るに足らない事だった。


呪縛という鎖が、今でも私を『あの人たち』に

繋ぎとめられ絡まりつづける。


水底まで、あとどれぐらいあるのだろう。

足掻きもがく力のなくなってしまった私は

なすすべもなく、どんどんと堕ちていく。


もう、どちらが上で、どちらが下で

右も左も判らない。


息がしたい。

そう願う事は許されるのだろうか。


許されるのであれば

私の思う『なにか』を

『あの人たち』の前に。

くだらないと吐き捨てられたとしても

もう1度光の差す水面へ。

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