隠すなら

 Twitter300字SS第73回お題「隠す」より(300字、改行含まず)


「ようこそ、俺の隠れ家へ!」


 なんてドヤ顔しているところ悪いが、友よ。


「何処が隠れ家だって?」


 どう見ても、ただの桜並木なんだが。

 こんな所に僕たちがいたら、目立って仕方がないだろうに。


「分かっていないな。昔から言うだろ。『桜の木の下には死体が埋まっている』とか何とか」

「小説の話だろ」


 確か明治くらいの。


「いや侮るなかれ。実際に、ここには埋まっているのさ。それこそ、いくらでも。この桜並木は鎮魂のためのものだってさ」


 言われて思い出す。

 この場所が、かつてあった戦争の激戦地だったことを。


「ここの主に聞いたのだから、間違いないさ」


 カラカラと笑って友は言う。


「だから俺たち浮遊霊が二人隠れたところで、今更なのさ」



【了】

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