歴史
桜、散華。
Twitter300字SS第31回お題「散る」 より(300字、改行含まず)
それは、いつもとは違う春。
雪解けと同時に最後の戦が始まった。
その日、彼は既に散り出した桜の下で、穏やかな表情で空を見上げていた。
愛刀を納めた朱塗りの鞘を愛しげに撫でて、彼は「ようやくだ」と笑った。
それ以上は何も言わず、ただ優しく笑う。
でも、わたしは知っていた。
戦って、戦って、戦い続けて、この最北の地まで流れてきた彼が何を求めてきたのか、わたしは知っていた。
だからこそ、わたしは笑って見送ることができない。
ああ、桜が散る。
まるで雪のように降り注いで、涙で滲むわたしの世界から彼を奪い去ろうとしている。
桜よ、さくら、花吹雪。
どうか彼を隠してしまわないで。
わたしはまだ。
彼が花を散らす様を見たくないのよ。
【了】
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