第15話「ゆっくりした日はいつ来るか」

 月曜日今日は晴れだ。快晴だ。降水確率0と先週とは違い、気持ちのいい一日を過ごせる。

 昨日は早めに寝てしっかり休憩した。今日は佐宮さんに本を返しにいくつもりである。昼休みなどを使って渡しに行けばいいのだろうが僕には下級生のクラスに行くというのはハードルが高い。

 よって今日は早めに行き玄関付近で佐宮さんを待つ作戦だ。


 家を出る、声は聞こえない。麻那辺さんはまだのようだ。今のうちに行ってしまおう。少し駆け足で階段を降りる。エレベーターもあるのだが急いでる時は階段を使った方が早い。

 階段を降りてエレベーターの前を通ったらドアが開き声が聞こえた。


「あ、おはよう相澤君」


 見つかった。これでは任務が達成できない。

 僕は逃げた。ハンターに見つかった逃走者のように!



 ・・・・・・・・・が捕まった。完全敗北の瞬間だ。


「相澤君!はぁはぁ・・・なんで・・・人の、顔みて、逃げると、かすごく失礼だよ、なんで私を、避けたの!はぁはぁ・・・」

「はぁはぁ、避けて、る、わけじゃありませんよ、はぁはぁ、今日は用事があって、麻那辺さんがいるのは、まずい、のではぁはぁ・・・」

「なによ、まずいことって、はぁはぁ、隠してないで、白状、しなさいはぁはぁ」

「お断り、します、じゃあ僕は行きますはぁ・・・はぁ、汗、ちゃんと拭いた方がいいですよ」

「あ・・・・・・行っちゃた、はぁはぁ、汗でベタベタだよ、この、相澤君の、バカーー!」


 麻那辺さんは追いかけてきてはいない、よかった、これでも追いかけてきてたらもう走れない。

 スタミナはそんなにないからさっきのでもう限界、任務を達成しなければ、麻那辺さんを振り切ってまで急いだ意味が無い。はぁはぁ。


「ここで待つか」


 下駄箱の先にある電光掲示板の前で目的の人物を探すことにした。目線は1年生の下駄箱付近、目的の人物を見失わないように目を光らせる。



 僕が電光掲示板前で待ち始めて5分後、目的の人物を見つけた。


「佐宮さん」

「あ、先輩おはようございます」

「あぁ、おはよう」

「どうしたんですか?こんな所で」

「佐宮さんに本を返そうと思って」

「あぁ、なるほど、ありがとうございます」

「いやいや、貸してくれてありがとう、面白かったよ」

「そうですよね」


 そう言って佐宮さんは何か考え始めた。


「先輩、お昼は空いてますか?」

「え?あぁ、空いてるよ」

「お昼はお弁当ですか?学食ですか?」

「学食だけど・・・」

「じゃあお昼一緒に食べましょう、色々語り合いたいので」

「わかった」

「場所は先輩が見つけておいてください、私4限が体育なので少し遅れるので」

「了解」

「それでは失礼します」


 そうして佐宮さんは教室に向かってった。僕も教室に向かう。

 教室に入ったら麻那辺さんから凄い視線を感じる。さっきの事まだ怒っているのかもしれない。おそるおそる自分の席に着く。


「相澤君」

「はい・・・」


 隣から抑揚のない声で僕の名を呼ぶ声がする。


「私を置いていったわね、そしてあの子はこの前来てた子だよね?あの子に会いに行くために私から逃げたのね…」

「ごめん逃げたりして、たしかに佐宮さんに会いに行ったのは本当だよ。この前借りた本を返さないとだったから」

「へ?あ、本、でもなんで朝に?昼休みとか休み時間もあったでしょう」

「僕が下級生のクラスに行くのはハードルが高いから朝登校してくる時なら行けるかなって思ったんです」

「そうだったんだ、ヘタレだね」

「ぐはっ!」

「まぁ理由はわかったからもういいよ」

「あ、ありがとう」


「おっはー!」


 バシ


「・・・痛い」

「何潰れとんの?」

「長嶺さんおはよう!」

「麻那辺さんおっはー!」


 人の背中を思いっきり叩いてきたのは長嶺さんか、超痛い。


「長嶺さんおはようございます」

「おーおはようさん」

「こっち来てどうしたんですか?」

「(耳元で)あんたに会いに来たんだよ」

「んな!?(ガタッ」

「あはは、面白い反応すんなーー!」

「遊ばないでください」

「それは無理や、面白いことが好きやから!」


 そんなこと言いながら自分の席に戻って行った。ほんとにからかいに来ただけのようだ。

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