第22話 誰にでもできる受流し講座



「えいさ」



ゴッ



何かが孝一の顔面に命中する。

大きなゴムボールだった。

本日の修行は・・・『ドッチボール』です。



(・・・もはや、武術関係ない気がする・・・)




「孝一君・・・想像してみて・・・いつもは体育の残り時間でしかできないドッチボール・・・今日は開始からドッチボールだった・・・」




「・・・」




「テンション上がる~」

(・・・いや全然)




「・・・ユズハ師匠・・・私はドッチボール苦手です・・・」

大海は申し訳なさそうに小さい声で話す。


「・・・わかるわ・・・私もあなたたちと同じくらいの年の時は ・・・『か弱いユズハちゃん』だった・・・」

(絶対嘘だ、絶対嘘だ)




「・・・でも、大丈夫・・・そのうち人に当てることが病みつきになるわ」

(・・・それはそれでどうだろう・・・)




【真田流ドッチボール ルール説明】

半径5mの円に一人が入る。

円の中央から大きく動かないこと。

他の2人が円の周りからボールを投げて攻撃する。


当たったらアウト

受流しセーフ


受流したボールを別のもう一人に当てることが出来たらボーナス点




ゲーム開始

円の中心:孝一

「痛い」

「痛い」


(正面向けないから、両手で受けられない・・・ユズハ師匠・・・モーションなしですごい球投げてくるな・・・)

孝一はユズハ師匠の方を向く。


「あら、いいのかしら?大海ちゃんの方を意識しなくて」

(・・・)


孝一がちらりと大海の方を向くと、ユズハ師匠のボールがヒットした。

「痛い」




円の中心:大海

「ふふ・・・大海ちゃんにも容赦はしないわ・・・」

(・・・怖い)


(・・・大海・・・こっちを見てないな・・・当てるのも気が引けるし・・・お尻にでも・・・)

孝一のゆるいボールは大海のお尻にぽよんと当たった。



「・・・孝一君・・・それはセクハラだわ」

「なんでだよ」





円の中心:ユズハ師匠

「さあ、どこからでも来なさい」


孝一はユズハ師匠の後ろから全力でボールを投げる。

ユズハ師匠は流れるような動作で横を向く、ボールはユズハ師匠を避けるように反れて、大海の方へ流れて大海の持つボールに当たる。



(・・・後ろ死角だったはずなのに・・・)




なぜ、後ろからの攻撃に対応できるのか?

真田流の第一原則は『先読み』

あなたたちが次にどうするか考える・・・ボールを投げるタイミングを想像する・・・イメージとしてそれは湧き出てくる・・・その流れに沿ってボールの軌道を変える・・・


これが『受流し』よ





「・・・『か弱いユズハちゃん』だった私は・・・放課後いつもドッチボールと受流しの練習をしていた・・・熊と・・・」




熊と?




ああ、ついに昔話じゃなくて現実にも登場しちゃったか・・・熊・・・

とその時思っていた・・・


その後本物を見るまでは・・・





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る