第三章 春季下越地区大会 一 新しい部員

 春季下越地区大会まで残り一週間を切った。


 大会初日と二日目は準決勝進出までをトーナメント方式で行い、二日目と三日目はベスト4による総当たりリーグ戦が行われる。


 昨年の実績から山並高校はシード権を獲得、Dブロックのシード校として出場。二回勝てば、決勝リーグ進出を果たせる。


 紅白戦翌日の日曜日、洋は正昭の運転する車で練習へと向かった。正昭が一緒に赴いたのは、専門医の正式な診断が下されるまでは、洋に無理な練習をさせないようにと、藤本に伝えるためであった。


 当初、藤本は正昭が来たことに何事かと思ったが、その理由に納得した藤本は、正昭の進言を承諾した。


 洋は、検査を受けるまでの今日明日(きょうあす)の二日間、藤本からはフットワークのみの練習に留めるよう指示された。


 診断の結果、洋の骨に異常は無かった。


 洋は正昭のスマホを借りてすぐ藤本に連絡を入れた。


 藤本は、万が一にもそんな事はないと思いつつも、やはり無事な知らせを聞いた時は、ホッと胸をなで下ろした。万が一にも骨折となれば、最低でも一ヶ月は練習が出来ない。下手をすれば、地区予選どころか、インターハイにも間に合わない。藤本の頭の中には、既にインターハイを戦い抜くプランがあった。当然、そこには洋がいる。洋抜きには考えられない。


 洋の一件は藤本にとって本当に大きな事件であった。だが、検査結果を聞いた後のこの日、実はもうひとつの出来事に対しても藤本は対応に追われることになった。それを、藤本がメンバーに知らせるのは、翌日のことであった。

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