第二章 新しいユニフォーム 三 ベールを脱ぐ矢島

 藤本もこれにはさすがに舌を巻くしかなかった。


「よし決めた。今週の金曜日まで、フルコートプレスの練習はこのメンバーでやる。ディフェンス、オフェンスの交代はない。徹底的にこれでやる」


 と、藤本は宣言した。


 何度も言うようだが、フルコートプレスは飽くまでディフェンスである。この練習はディフェンスの練習である。はっきり言って、洋一人に破られたとあっては、今までの苦労は何だったのかと言いたくなる。だから、レギュラー陣に徹底させるのは分かる。しかし、果たしてそれだけであろうか。インターハイに出場したら、まず間違いなくあのチームと対戦する。いや、あのチームに勝たなければ全国制覇はあり得ない。あの悪夢を繰り返さないためにも、藤本は洋を対フルコートプレス用の秘密兵器にしようとしているのではないのだろうか。


 オフェンス力、と言うよりは、突破口を見つける洋の直感はこの後(あと)の練習でも光った。


 日下部は洋のディフェンス力も知っている分、今後の洋に更なる期待をしつつも、これで自分の出番が無くなるであろうことも朧気(おぼろげ)に思い始めていた。

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