大河小説 南北朝時代/楠木正儀 伝

正田前 次郎

まえがき

まえがき

 あなたは南北朝時代を知っていますか。

 南北朝と言えば楠木くすのき正成まさしげ!? いえ、正確にはその正成が討死した直後、後醍醐天皇が吉野に出奔してからの五十六年間を指します。本作は正成の時代と、一休さんと足利義満よしみつの時代とを繋ぐ大河小説です。

 主人公は楠木正成の三男、楠木正儀まさのり。陰の主役は南北朝時代そのものです。本作は単なる正儀の一代記ではありません。言わば南北朝を知るための小説です。そして、南北朝時代のほぼ最初から最後までを生きた正儀は、歴史を語るにふさわしい主人公です。和睦わぼくを求め続けたその生涯は、楠木の心象を一変させることでしょう。


 南北朝の顛末……特に南北朝時代の終焉しゅうえんまでを書いた小説を、書店で目にすることはありません。戦国時代と同様に波乱万丈の時代ですが、認知度が低いのは、ひとえに歴史小説が少ないためかと思います。そこで思い立ち、南北朝の顛末てんまつがわかる小説を書くことにしました。しかし、太平記にも記載のない、南朝の後半を小説にすることは容易なことではありません。さまざまな書籍や資料に目を通し、現地に足を運び、気がつけば(二〇一四年から)四年の歳月が経っていました。

 本作は両朝廷の分裂に至る経緯から時代の終りまでを、起、承、転、結の四章、全四十八話として描きました。そして、私自身が見てみたいと思う大河ドラマをイメージして小説にしました。

 南北朝は、両朝天皇の登場や、戦前戦後の異なる歴史観を引きずる難しい時代です。本作は、これらの事情にも細心の注意を払い、純粋な歴史小説に仕立てています。

 正儀ら魅力ある登場人物が、歴史に対してどのような役割を担ったのか、ぜひ、ご覧ください。そして南北朝時代の面白さを、多くの方に知ってもらえればと思います。


注)本作はフィクションです。歴史事象や伝承を調べて作成していますが、必ずしも忠実に記載しているわけではありません。あらかじめ、ご了承願います。


二〇一八年 正田前 次郎 (二〇二一年 改稿)




起の章「南北朝の分裂」(第1 ~ 12話)

 父、楠木正成の挙兵は、幼い虎夜刃丸とらやしゃまるを動乱の中へと押し流す。決戦におもむく正成が虎夜刃丸に託したこととは。


承の章「果てない争い」(第13 ~ 24話)

 若武者に成長した虎夜刃丸こと正儀まさのりは、動乱に身をほだされる。楠木の宿命に翻弄ほんろうされる兄、正行まさつらの真の思いとは。


転の章「強硬派と和睦わぼく派」(第25 ~ 36話)

 南北朝の和睦わぼくを模索する正儀は動乱の中で苦悩する。そんな中、正儀がとった驚くべき行動とは。


結の章「南北朝の合一」(第37 ~ 48話)

 思わぬ事態が正儀の南北朝合一の希望を打ち砕く。はたして正儀が求める合一は成るのか。感佩かんぱいの最終章。


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