ノヤの黙示書

はからん

緒言

――私は2人の神を見た。星空のような美しい瞳と翼を持っている。

 1人は人類を、生命を、この世界を作り上げた神、『コルネリア・セイクリッド』。

 1人は人類を、生命を、この世界を滅ぼす力を持つ神『アルトリア・セイクリッド』。

 コルネリア・セイクリッドは人類にそれぞれ「知恵」「感情」「秩序」を創り、与えた。

 だがそれがアルトリア・セイクリッドが「壊した」。

 人々の知恵は失い、感情は壊れ、秩序は乱れた。それにより人々は戦争を起こした。


――嗚呼、なんて愚かなのだろう。コルネリア・セイクリッドはそう思った。

 愚かな人間、罪を犯していくばかり。コルネリア・セイクリッドは醜いと思い、恥だと思った。

 意味もない戦争を繰り返す醜い人間にしたのは紛れもなくアルトリア・セイクリッドだ。

 コルネリア・セイクリッドはアルトリア・セイクリッドを害だとみなした。

 アルトリア・セイクリッドもコルネリア・セイクリッドを壊したいと思っていた。

 これが、神同士の戦争の幕開けだった。


――私は戦争を見た。コルネリア・セイクリッドが、アルトリア・セイクリッドが、

 神同士が凄まじい力をぶつけ合って戦っていた。

 しかしアルトリア・セイクリッドの滅ぼす力はあまりにも強すぎた。

 旗色が悪かったコルネリア・セイクリッドは2人の御使いを生み出した。

 その御使いが『デザストル・セラフィム』と『ヴァーテル・セラフィム』だ。

 この御使い達も星空のような、美しい瞳、それに4枚の翼を持っていた。


 デザストル・セラフィムは雹や火を地上に降らし、地上の三分の一を焼き払った。それにより多くの人類が死んだ。

 ヴァーテル・セラフィムは海の三分の一を減らした。それにより海の生物の三分の一が死んだ。

 だがそれは無意味だった。壊すという作為があったアルトリア・セイクリッドには寧ろ好都合だった。

 コルネリア・セイクリッドの心に焦燥感が生まれていた。早く、早く、全てが壊される前にと。

 そしてコルネリア・セイクリッドは『禁断の力』を出してしまったのだ。アルトリア・セイクリッドに罰を与えるために。


――多くの犠牲によりアルトリア・セイクリッドは敗北した。コルネリア・セイクリッドは彼に罰を与えた。

 アルトリア・セイクリッドはもう神ではなくなった。死んだのだ。しかし私は預言する。彼はまた蘇る。

 そして今度こそ人類を、世界を、創造神を「壊す」。

 人類よ。せめて死に至るまで忠実であれ、『創造神』コルネリア・セイクリッドに讃美を。

 そして『破壊神』アルトリア・セイクリッドによる死を受け入れよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る