第121話≪尾てい骨骨折・1≫

新・ここは世田谷豪徳寺・24(さくら編)


121≪尾てい骨骨折・1≫



 今日は、年に数回しかない不快な日だ。


 小学校の頃から思ってんだけど、なんで日曜と祭日の間の日って休みにならないのかなあ。

 太っ腹に三連休にして残りの日に集中してやった方が絶対効率がいい。

 先週は敬老の日のハッピーマンデーの三連休だったことと、もう一つの事情で、余計そう感じる。

 ここんとこ、由美(学級員の米井由美)と佐伯君のことで気を使ったせいかもしれない。


 昨日は起きたら三時だった。午後の三時。あたしの日曜はどこへ行ったんだ!?って感じ。


 それもすっきりした目覚めではなかった。なんだか頭がボーっとして、まだ寝たりない。

 シャワーでも浴びてすっきりしようと思って階段を降りたら、下から二段目で踏み外した。


 ウ……


 しばらく声が出ないで、数秒たってから「アタタタ……」になった。


 尾てい骨をしたたかに打ってしまったようで、あたしの遠いご先祖がお猿さんであったことを久々に思い出す。


「何やってんのよ、こんな時間に」


 とパソコン見てたさつきネエが顔を出す。


「なによ、あれだけ寝といて、そのブチャムクレは!?」

「せっかくの休みだから寝ダメしてたの!」

「ハハ、ねだめカンタービレだ」

 古いギャグを言う。

「お姉ちゃんだって、五十歩百歩の時間に起きたんでしょうが」

「昼には起きてたわよ。どうしたオケツ打ったか?」

「ちょっちね。ご先祖がお猿さんだってこと自覚した」

「さくらはマンマだけどね。それにしても痛そうだね、あたしが見たたげようか?」

「けっこうです!」

「尾てい骨骨折だったら、お医者さんに診てもらわなきゃダメだよ」

「大丈夫だったら!」


 ふと、お医者さんに行ってお尻丸出しで診てもらってる様子が頭に浮かんで、どーしよと思ったけど、お姉ちゃんのニクソイ笑顔の前で弱みは見せられない。


 平気な顔して浴室へ。


 しだいに痛みが薄れてきたのでシャワー浴びてリフレッシュ! オーシ、残りの休日を取り戻さなきゃと思って着替えに手を伸ばす……と、パンツが無かった。寝ぼけて忘れたんだ。仕方ないんでバスタオル体に巻いて取りに行く。


 階段の下までいくとパンツが降ってきた。


「さくら、あんた、もう高2なんだからキャラプリのおパンツなんかよしなよ」

「も-、取りに行くとこだったの!」

「タンスの前に落っことしてたのよ、あんた」

「お姉ちゃんに関係ないよ!」


 アミダラ女王とレイア姫のは、あたしのラッキーアイテムなんだ。


 スターウォーズは後から観たんだけど、メグ・キャボットの『プリンセスダイアリー』でハマってしまった。

 主人公のミアは、このおパンツでジェノヴィアの王女になったんだ。あたしも、入試はこれで合格した。リラックスしたいときや、ここ一番の勝負のときは、これに決めている。あ、勝負たって、世間がいうとこの勝負とは違うので念のため。


 部屋に戻ってパソコン起こして座ろうとしたら激痛!


「ウッ!!」


 尾てい骨を忘れていた(-_-;)。


 少し前かがみで座ると、痛みがない。その姿勢で『尾てい骨骨折』を検索。自然治癒を待つ以外に手が無いことを知り、安心したり落胆したり。


「そんな姿勢で見てると目わるくするよ。お医者さんに……」

「自然治癒しか手が無いの!」

「アハハ、明日から学校どうするつもりよ。タチッパで授業受けるわけにいかないでしょ……」


 そうだ、学校で、こんなみっともない姿勢で座っているわけにはいかない。しばし研究の結果、座るときに気を付けることや、座っているときは左右どちらかに重心を寄せればヘッチャラということに気づく。

 でも、慣れて忘れたころに姿勢を戻すと、また「ウッ!!」ということになる。


 で、夕べは安静第一と、9時にはベッドに入った。


 で、延べ10時間近く寝たというのに、まだ眠い。


 豪徳寺で電車に乗ったら、奇跡的に目の前のシートが空いていた……が、座るわにわいかない。すると、なんという偶然、四ノ宮クンが横にやってきて、あたしが座る意思が無いとみて、さっさと座ってしまった。


「あ、やっぱさくらだ。良かった、おれ?」

「あ、いいですよ。今日から健康のために車内では立つことにしたんです」

「ふうん、でも、ホームで何回もアクビしてたけど、徹夜で勉強?」

「あ、まあ、そんなとこです」


 本当のことなんか言えない。


 こうして、あたしの『ねだめカンタービレ』が始まった。

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