.

「…………」

「――――」


 饒舌な少女は話さない。力なく、しかし強固に世界を拒絶するように瞼を閉じた。それ以上預けようのない心身全てを青年にゆだね、色のない世界を眺める。

 心の中に渦巻く絶叫。


――――ああルゥズルゥズルゥずるぅずるーずるーずるーずるーずねぇねぇるーずわたしまちがってないよねまちがってないよねまちがってないんだよねだってまちがってるはずがないものまちがってるならわたしはなんなのいみはあるのないのかななぜってそうでしょうまちがっているのなら「わたしたち」のいのりはむだでねがいはむえきでゆめはいぎをなさないわならそれらからうまれたわたしはなんなのねぇわたしはもうだめなのかなおかあさんいったよねゆーとぴあはねがいをかなえてくれるっていったよね「おかーさん」はだからわたしをうんだのにだからわたしをしょうじさせたのにどうしようどうしようどうしようああこのかんせつのはずれたせかいでならあなたとともにいられるとおもったのに―――


 少女は黙る。

黒と白の瞼をしばらく見続けて、そして。光を受け入れた少女の瞳は、笑った。


「――――さ、いこっかルゥズ。『無色の丘』」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る