第24話 の乃かと真っ赤なお母さん
大きな公園への冒険ごっこが終わった日の夜、ご飯をレンジで温めて食べました。お母さんの分もつくってあげました。お母さんはお布団で寝ていましたが、むくりと起き上がって「ありがとうののちゃん。ののちゃんがいてくれて本当にお母さんは幸せ」と言ってくれました。そして、一緒にご飯を食べました。お母さんはいくら食べてもほっぺたがへこんで青白い顔をしています。病気だからかもしれませんが心配です。
ご飯を食べながら今日あった出来事のことを話しました。ケイくんやショウくん、アンナちゃんのことはもうお母さんも知っています。仲良しのお友達の話をするとお母さんもにこにこしてくれます。お母さんと一緒にいる時間は少なくなりましたが、お話しできる時間はの乃かも幸せです。
ご飯の後のお水を飲んで、駅前でお父さんに会ったこと、マヤちゃんとそのお母さんが一瞬にいたことを話したときのことです。お母さんの青い顔がみるみるうちに赤くなりました。
「ののちゃん、お父さんに会ったの?」
「お父さん、なんて言ってた?」
「マヤちゃんって、クラスのお友達?」
病気だってことを忘れたと思うくらい、お母さんは真っ赤な顔で次々との乃かに質問をしました。あまりにもはやいので、の乃かも答えるのが大変でしたが、お母さんの目の端っこに涙が滲んできたのが見えたので、一生懸命に知ってることを答えました。
「あの人、いつも夜には『ごめん、お前がいないとだめなんだ』なんて泣きついてきてたくせに」
「帰ってこない期間が長いと思ったら、いつの間に、というか誰なの。ああ、盗られたのね。私が少し具合を悪くしたからって、すぐに心移りするなんて」
お母さんは泣き叫ぶようにして独り言を言いました。息が荒くなって、このままだとお母さんが倒れてしまうんじゃないかと心配になりました。そして、そんなお母さんを怖いと思ってしまいました。
「ののちゃん、ののちゃん。ごめんね。こんなお母さんとお父さんでごめんね。ののちゃんしかもういないの。お母さんには、ののちゃんだけ。愛してる」
そう言ってお母さんはの乃かをぎゅうと抱きしめました。久しぶりにぎゅっとされたのに、暖かい気持ちになりませんでした。その晩は、そのまま2人でお布団で寝てしまいました。
次の日、お母さんは眠ったままだったので、の乃かは自分で起きて、食パンを食べて、お水を飲んでから歯磨きをして、1人で学校に行きました。
教室に入って、ランドセルの中身を出そうとしたときのことです。
「ねえ、ちょっと」
笑っても怒っても、泣いてもいない、不思議な顔をしたマヤちゃんに声をかけられました。
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