第21話 の乃かと冒険の始まり
ケイくんとは公園でよく会います。家に帰ってお母さんが寝ていると、うるさくしたら怒られるので、の乃かは公園によく行きます。家を出て、まっすぐに道を歩くと団地が見えます。その団地の前にある小さな公園です。
の乃かがブランコに乗っていたときに、知らない眼鏡の男の子が隣のブランコに来ました。それがケイくんでした。ケイくんは、「ぼくはケイって言うんだけど、君は?」と言いました。の乃かは自己紹介しました。
「の乃かって言うんだ。うん、ぼくはよくこの公園に遊びにくるんだ。よろしく。ねえの乃か。の乃かの得意なことってなに?」
突然言われたので、答えられませんでした。なんだろう。得意なことかあ。
「ぼくはね、手品が好きなんだ。ちょっと見てくれるかい」
そう言うと、ケイくんはポケットから男の子に人気のモンスターがついているハンカチを取り出しました。そして、お財布から10円玉を1枚出して手のひらの上に乗せました。
「このコインには、タネも仕掛けもございません」
ケイくんがハンカチをコインの上に被せて3つ数えてからとると、コインはどこかに消えてしまいました。の乃かはびっくりしました。さらにびっくりしたのは、その後10円玉がの乃かの服のポケットから出てきたのです。
「うん、どう、なかなか面白いでしょ。また今度練習してくるからね」
ケイくんはそう言ってにっこり笑いました。笑うと目が細くなるなと思いました。
それからは、よく2人でその公園で遊ぶようになりました。かくれんぼをしたり、いろおにをしたり、ケイくんと手品を見せてもらったりしました。たまにショウくんとアンナちゃんも来てみんなで野球やおにごっこをして遊ぶこともありました。学校ではいじわるをされるけど、団地の前の公園では、友達が優しくしてくれました。なので、の乃かもみんなに優しくしました。みんなが好きなことはの乃かも好きになりたいと思って、野球や走ることや、手品を教えてもらいました。練習をしていると、少し上手になりました。すると、ケイくんが、
「の乃かは何でもすぐに覚えるね。教えてもらって、すぐできるようになるのが特技だね」
と言ってくれました。の乃かは褒められることがあまりないので嬉しくて顔が赤くなりました。たしかに、みんなほど上手ではないけど、教えてもらったことはできるようになりました。の乃かは教えてもらってすぐできるのが特技だと、初めて知りました。これからは、もっと色々教えてもらおうと思いました。
ある日、ケイくんが
「今日は冒険ごっこをしようよ」
と言いました。みんなと冒険に行くのは考えただけでワクワクしたので、の乃かはもちろん賛成しました。ショウくんとアンナちゃんも声をかけると、すぐに来てくれました。冒険なので、2人ともそれにぴったりの道具を用意しました。ショウくんは野球で使っているバットです。これで戦いはばっちりです。アンナちゃんは、宝石のようなキラキラのガラスの靴です(子ども用のやつです)
「これ、お気に入りなんだ。これを履くといつもより速く走れるきがするの」
とアンナちゃんが見せてくれました。急ぐときもアンナちゃんがいれば安心です。
「今日はぼくのペットも連れてきたよ」
ケイくんが首にかけた虫カゴには、小さなトカゲのようなのが入っていました。カナヘビというようです。小さくて可愛いけど顔は恐竜みたいで強そうです。
「うん、さて、ではこれから大きな公園に宝物を探しに行こう」
ケイくんが言いました。の乃かの家から団地の公園に行って、さらにずっとまっすぐ行くと大きな通りにでます。信号を渡って左の坂を下りると駅が見えてきます。駅の階段を渡って線路を越えると、反対側に大きな公園があります。そこがめざす場所です。
いよいよ、4人の冒険の始まりです。
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