第7話 ののかのいちにち

今日も暑いなとののかは思った。


まだ朝なのにセミがみんみんと鳴いている。

カーテンで窓は隠れているけれど、お日様の光が部屋に入ってきて、暑い。


お外はもっと暑いのかな。お母さんは、「外は危ないから、でちゃだめ」と言うので、ののかはお外には出られない。


お母さんはののかのことが好き。ののかもお母さんが好き。いつもご飯を食べさせてくれるから。レンジで温めて、いつもご飯を作ってくれる。チャーハンとか、唐揚げとか、コロッケとか。ののかは特にお魚のフライが好き。


お母さんは、あまりののかとは寝てくれない。夜はお出かけが多い。きっとおしごとに行ってるんだと思う。


朝起きたら、たまにお父さんがいる。お父さんは嫌い。嫌いっていうとお母さんも悲しい顔をするから言わないけど、本当は嫌い。だって、すぐに怒って怖いから。怒るとすぐに叩く。それから、よくたばこを吸う。たばこのにおいも嫌い。吸うとくさくてせきがいっぱいでるから。


こないだはとても怖かった。ののかはきれい好きだから自分でお風呂に入るんだけど、途中でお父さんが入ってきた。お父さんはののかのことを気づかないふりして、お風呂に入ってたののかの上に座ってののかを溺れさせた。


重いし、息ができなくて、息を吸おうとしたらお湯が入ってきてくるしかった。泣いてたけど、お湯の中だからわからなかったのかもしれない。


ようやくお父さんはどいてくれて「お前いたのかよ」って言って笑ってたけど、ののかは笑わなかった。笑わなかったらまたぶたれた。


お父さんは怖いけど、ののかは幸せ。お母さんがののかのことを「あいしてる」から。


ののかが大事だから、お家で大切にしてくれる。テレビで、ののかみたいな小さな子どもは幼稚園に行くってことは見た。けれど、ののかは大事にされてるから行かないんだって。


おもちゃだって3つもある。小さな車と、おままごとのお皿と、それからテレビ。


今日は、お母さんの家の鍵についていたぬいぐるみをもらった。潰れた鼻のぶたの小さなぬいぐるみ。両手で包んで、ぎゅっとした。


名前をつけてあげる。ブー太。よろしくね。ブー太。



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