盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ

ひるま

~~プロローグ~~

第1話-プロローグ-:空色の髪をなびかせて

「スゴく綺麗キレイ…」


 空を見上げる少女の瞳に映るのは。


 空色そらいろの髪をなびかせる玉虫色の騎士。


 少女は、光の粒子をまき散らして滞空するその姿よりも、甲冑全体を覆うシャボン玉の表面のような美しさに心を奪われた。


 はて?あの姿、どこかで見たことがあるような…。

 西洋甲冑を主体としたフォルムに両腕、両膝から伸びる刃剥き出しの刀剣類。そして可動式バイザーの付いたヘルムの裾からなびく髪の毛等々。

 特徴溢れる姿だけれども思い出せない。


 うーん…。


 ふと湧き起る疑問も、初めて目にする幻想的な色彩に、いとも簡単に吹き飛んでしまう。


 ジュルっ。

 おっと、いけねぇと少女は思わず垂れそうになるヨダレをすすった。


「タカサゴォ…」

 アレに幼馴染の高砂・飛遊午たかさご・ひゅうごが乗っていると思うと心配でならない。



 彼らの主、すなわちアークマスターであるココミ・コロネ・ドラコットは、あの騎士を盤上戦騎ディザスターと呼んだ。


 しかし。


 あの騎士の出現は、イヤイヤ、これから繰り広げられようとする戦いは本当に必要なものなのだろうか?


 先ほどココミは、チェスゲームにおいて兵士ポーンの駒を、凡ミスを犯して相手ポーンに取られてしまったところだ。


 なのに。

 

 それが、あの空色の髪の騎士となって現れた。


「ねぇ、ココミちゃん。あの兵士の駒、獲られちゃったのに、また戦うの?」


 少女“鈴木・くれは”は、ココミたちが行っている魔導書グリモワールチェスの特別ルール“アンデスィデ”に疑問を投げかけた。


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