第11話~戦いの扉~
到着した場所を見て、私たちは絶句した。まさか、ここって…。
「ベスト、王国?」
「え!?」
フウくんの呟きに、ワタルさんが困惑した声を上げる。そらさんも、目を見開いていた。
「ち、違うでしょ!だって、この前行った時は、城はなかったじゃない!」
そう、アスカちゃんの言う通り、この前はなかった。そう思って座標を書いた紙をいる。そこには確かにベスト王国の座標だった。なんで、どうして、ここに…。
「でも、この城はどう見ても『トワル城』だ。」
そう。ここで私たちは育った。その場所が、目の前にあるのは、おかしいんだ。前は朽ち果てた遺跡だったはずなのに…。
「…っ!」
でも、一つだけ、あの人がここを用意した理由がある。そしてそれを、フウくんと私は分かってしまった。
「…そんな、いや、入りたく、ない。」
「サクラ…。」
そう、私はここで殺された。しかも、あの人たちに。
その事を考えてると、遠慮しがちに肩を叩かれる。振り向くと、そらさんが心配そうに私を見ていた。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
彼女には記憶がない。分かってるのに、あの時の彼女と重なる。
「あ…大丈夫。」
「でも、顔色が悪いです。辛かったら言ってください。」
「…ありがとう。」
無理して笑えば心配そうに頷いてくれた。
大丈夫。あの時とは違う。そう思っても、不安は取り除けない。
「サクラ、行ける?」
フウくんも、そう言って私の顔を覗き込む。フウくんも、不安そうだった。
「怖いよ…。」
そう言えば、すぐ頷いて頭を撫でてくれる。
「うん、俺も怖い。でも、進まなきゃ。あいつを、倒さなきゃ。」
「…うん、そうだね。…うん、大丈夫。頑張れる。」
フウくんも、怖いんだ。でも、それ以上に前に進む覚悟がある。なら、私も一緒に行く。『離れない』って、約束したから。
「行こう!」
私がそう言うと、アスカちゃんたちが頷く。
「あの女の相手は任せて!」
「今度は失敗しない!」
「一緒に行こう!」
みんなそう言って扉に手を掛ける。そうすると、なんか勇気が出て来る。そして、私も手を掛ける。指輪が光る。
「私たちもいいですか?」
「もちろん!」
「失礼します!」
そう言ってそらさんたちも手を掛ける。なんだかいいな、こういうの。
「行くよ。せーの!」
そうして私たちは、戦いの扉を全員で開けた。
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