第9話〜過去の出来事と今起こってる事〜

 あの映像をみてから、何も記憶がない。本部長が何か話してたけど正直聞けなかった。気付いた時にはもう部屋に着いてた。

「サクラ、部屋についたよ。」

「…うん。」

 フウくんに優しく声をかけられ、なんとか頷く。

「ちょっと、ソファに座って待ってて。すぐもどるから。」

 そう言ってフウくんは私を静かにソファに座らせてくれる。そして、キッチンの方に行った。きっとお茶を入れに言ってくれたんだ。

「はい、サクラ。いつものお茶。」

「あ、ありがとう…。」

 受け取ろうとすると、フウくんは「駄目かな?」と言った。

「え?」

「お茶、こぼしたら火傷しちゃうし、手の震えが治まってからお茶にしようか。とりあえず、テーブルの上に置いとくね。」

 私の震える手を見てそう言うと、少し先のテーブルに置いてくれる。

「ありがとう。それと、迷惑かけて、ごめん。」

「迷惑なんて思ってないよ。隣、座っていい?」

「うん。」

 そう言ってフウくんは私のすぐ隣に座る。私の手を握りながら優しく話しをしてくれる。

「あの時も、そうだったじゃん。あの時も、サクラが『元凶』なんて言われて…。あいつ、同じ事を繰り返そうとしてるんだよ。」

「うん、そうだよね。分かってる。でも…ううん、だから、怖い。」

 そう、怖いんだ。本当に、繰り返してしまいそうで。

 そらさんと話した事が、映像を見てから頭を離れない。

―『もし、この事件が、あの頃、私たちが姫だった頃と同じように進むとしたら、歴史を繰り返す事になる。』

―『あの時、私たちの先祖は『死』を選んだ。大切なものを護るために。』

 あの事を思い出すと胸が苦しい。歴史を繰り返したくない。なのに、あの人は、繰り返そうとしてる。悲しい歴史を。でも―

「でも、あの時と同じようになったら、私、絶対に―。」

 『フウくんを護るから。』

 そう言おうとした。ここまで来たら、どうしようもない、そう諦めて言おうとしたのに…。

 フウくんは、それ以上は言わせないと言うように、私の口に人差し指を当てた。

「その先、言ったら怒るよ。」

 そう言ってフウくんは本当に怒った時の顔をした。なんで…。

「そんな事にならないようにしてたけど、主導権的なものは向こうにあるのかな?全然思ったようにいかないね。」

「フウ、くん…。」

 フウくんはそう言って困ったように笑った。

「でもね、サクラがあの時と同じ事しなくていい。」

 フウくんは、真剣な顔でそう言った。

「もちろん、俺が代わりにやるわけじゃない。布陣はあの頃と同じだから、何やってくるもだいたい予想は付く。まあ、その予想が外れたら意味無いけどね。」

 フウくんは、少し笑ってそう言う。冗談めかしてそう言って、元気づけようとしてくれてる。

「でも、だからといって何も出来ないわけじゃない。出来る事はあの時よりもあるよ。そのために、鍛錬したんだもん。だから、大丈夫。」

 そう言って、フウくんは私の頬に手を当てる。それが心地よくて目を閉じる。優しいその手に触れていると、自然と安心出来た。

「何があっても、二人で、ううん、みんなで帰って来よう!そのためなら俺、なんだってするから!」

「…うん、そうだね!みんなで帰って来よう。」

 そう言ってると、なんだか少し元気が出て来た。しかも、大丈夫かもしれないって、そう思った。

 何があっても大丈夫。そんな気がした。

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